子ども食堂でキャリア教育


 9月6日の読売新聞社会面の「言わせて 聞かせて」の欄に「キャリア教育 子ども食堂で」という見出しで記事が掲載されていた。大阪府熊取町のカフェバー「talk so」のオーナー横尾さんの話だ。横尾さんは、このカフェで子ども食堂をやっており、かつキャリア教育もやっているという。子ども食堂を利用して様々な職業の人と交流できる場を作っているという。ソフトクリームの総合メーカー「日世」の社員を呼んで、ソフトクリームつくりを手ほどきしたりしている。

横尾さんが子ども食堂でキャリア教育を始めたのは、以前地元の工務店で採用担当をしていた経験からだ。そこで接した就活中の学生の多くが自信なげで、内定を取るために自分を偽り、そつのない発言に終始している印象を受けたからだという。この指摘、なかなか日本のキャリア教育の弱点を突いていると思う。

日本の学校で行われる就活指導、特に高校での面接指導では、できる限りマイナスをなくすための指導を行う。入室の仕方やお辞儀の仕方、座り方などから始まる。高校生としての最低限の常識を備えているかという点では大事な指導だ。しかし、人材不足の現在、企業側からすると、「この子はどんな子なのだろう?」「どこまで働いてくれるのだろうか?」ということが大きな問題意識になる。そこで、重要なことは、自己PRと志望動機になるのだ。この二つが面接の骨格になる。一応、履歴書にも自己PRと志望動機を書くのだが、生徒はその書いた文面を必死に覚えようとする。だから、面接練習でも自分のことを話す自己PRにもかかわらず、ぎくしゃくした感じになるし、働きたいと思って応募した企業にも関わらず途中で話が止まってしまうというようなことになる。これでは、せっかくの機会を台無しにしてしまうのだ。

私は、今でも面接指導を行うときに心がけていることがある。練習に入る前に、「本音で話をしよう」と雑談をするのだ。「なぜ、この企業?」ということを生徒の言葉で話をしてもらう。そうすると、その仕事に興味を持った話が大概は出てくるのだ。それを私は原石と呼んでいる。あとは、その原石を磨き上げて、面接で生徒が話せる言葉にしてあげることなのだ。これを生徒と一緒に行う。

記事には、マイナビが2024年12月に大学1・2年に行った調査で、約6割の学生が卒業後のキャリアの方向性が「決まっていない」と回答したという。大学進学を知識偏重、偏差値で選んでいるとこういうことが起こる。私は、校長の時、先生方に進学指導の在り方を見直してほしいと訴えたし、生徒にも訴えた。すなわち、従来の自分の成績から大学を選び、そののち学部を選ぶという方法ではなく、まずは学部を考えることから始めなさいと言った。大学の学部選びは、将来の自分の人生領域と密接に関連していることが多い。法学部や文学部に行って、モノづくりはできないし、薬学部に行って弁護士になるのはかなりむずかしい。だから、自分は将来どう言う分野で仕事をしていきたいのか、そしてそれを実現するのはどういう学部なのかを考えたうえで、第一志望の大学から滑り止めの大学まで考えなさいと言ってきた。そうすれば、記事にあるように大学に入学して将来の展望を持てない学生など生まれないと思う。

ここにも、知識偏重の日本の教育のひずみが表れているように思う。横尾さんには頑張って小さい時からキャリア教育を積み上げてほしい。


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