ルールメイキングは、Agencyを育む


 10月25日の読売新聞の教育の欄に「ルールメイキング」の取り組みが紹介されていた。紹介されていたのは、大阪府泉大津市の小津中学校、愛媛県西条市の県立丹原高校の取り組みである。いずれも制服がテーマであった。制服は、日々の学校生活の中で、大きなウェイトを占めている。そして、ほとんどの学校で制服に関するルールは、学校(教師)が決めている。生徒の利害に直結するにも関わらず、教師サイドに決定権があるという状況だ。どうも社会の仕組みとは違っている。地方自治でも住民参加の仕組みは、選挙での投票以外でもいろいろある。このことを考えると、学校というところは、社会の仕組みとは異質なところが多分にあるように見える。教育基本法にあるように、「平和的な国家及び社会の形成者」を育てなければならないにもかかわらず、その訓練の機会が奪われているのが学校だ。
 また、ルールメイキングは、「50㎝革命」や「一歩踏み出す力」などで表現されるAgencyを育てる絶好の機会である。もう一度、OECDが唱えるAgencyの定義を振り返ろう。Agencyとは、
「自ら考え、主体的に行動して、責任をもって社会変革を実現していく力」
である。私が、附属中学校で校長をしているとき、まだAgencyという概念に出会う前の話である。同じく制服についての議論が起こった。コロナ化で続けられていた体操服登校を継続してほしいというものだった。あるクラスからの提案だ。その提案を校長に伝えに来た。私は、「君たちには、生徒会というきちんとした組織があるのだから、生徒会できちんと議論をしなさい」とアドバイスした。どうも、日本の古い伝統として、「お上に頼み込む」というのがあるようだ。校長室に直接頼みにくるのも勇気のいる行為だが、これはAgencyではない。Agencyは「主体的に行動して、責任をもって社会変革する力」なのだ。権限のある者に頼み込むことではない。
 こんなことがあってからAgencyという概念に出会ったのだが、当時明確にAgencyの概念がわかっていたわけではなかったが、私のアドバイスは的を外れてはいなかったのだと思った。ルールメイキングは本当にいろいろなことを生徒に教えてくれる。1年以上前にニュースで放映されていたが、ある高校で制服の自由化が議論された。多くの生徒は制服の自由化に賛成だが、一部の生徒で制服の自由化に反対の意見が出た。理由は自由化して私服を着るようになると、服を何着も用意しなければならない、費用が掛かるというものであった。結局議論は継続することになったと記憶している。学校という狭い世界でも、意見をまとめ上げるというのは大変難しい。まして社会となれば、様々な価値観がある。これらを踏まえて社会変革しなければならない。社会を変えるというのはそれほど難しいことなのだ。

まさに、この難しさをルールメイキングは教えてくれる。ルールメイキングは、Agencyを育んでくれる!


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