川口広美(広島大准教授)への疑問・反論

,

 6月9日の朝日新聞の18面、教育の欄に主権者教育の研究者である広島大学の川口広美准教授が記者のインタビューに応えていた。朝日新聞の「萎縮」に関するキャンペーンの一環だろうが、川口准教授のインタビュー内容について、疑問・反論があるので述べてみたい。インタビュー内容も掲載するので、少し長くなることをお許し願いたい。

(記)学校の主権者教育の現状は。
(川)私の研究の一環で行った2021年度の調査では、沖縄の基地問題を含む安全保障や原発問題といった意見が分かれる現実社会の課題について、一つの学期で議論を行ったかとの設問に「一度もない」と答えた高校教員が6割に上りました。
 受験準備に時間を割かなければならないなど、他の要因もありますが、中立性への意識が回避につながっている側面があります。

これはどういう見解だろう。「中立性への意識が回避につながる」のではなく、中立性に関する認識が高校教員に十分に理解されていないから、議論を行わない教員が6割にも上るのではないか。という事は、文科省の「多面的・多角的に取り上げる」という今回の見解は、学校現場に意味のあることではないか。

(記)文科省の違法認定の影響は。
(川)中略。ただ教育基本法施行から79年間、中立性を逸脱するような行為は他にもあったはずなのに、今回だけ認定に至ったことには首をかしげます。

文科省としても教育の中立性違反については、教育基本法制定以降抑制的に対応してきたのではないか。中立性違反を連発すれば、それこそ朝日新聞が言うように学校現場が萎縮する。今回の同志社国際高校の違反行為は、度が過ぎているという事だ。すなわち、
①違反行為をしている抗議船に生徒が乗船した
②多面的意見の取り上げを行ったかの資料を求めても沖縄のホームページしか学校から提示されなかった
③過去に生徒に座り込みを求めることがあった。
というものである。こういう過去の中立性に関わる問題には無かったような大きく逸脱した事例が今回はあったことを主権者教育の研究者ならしっかりと押さえるべきだろう。

(川)教員にとっては、どこまでやれば違法と認定されるか、線引きがあいまいなように感じられるでしょう。「議論などしない方が安全」との意識が働く可能性があります。

川口准教授は、文科省の見解を読んだのだろうかと思う。過去にも主権者教育に関してガイドラインを文科省は提示している。この件については、日本大学の西田教授がきっぱりと論破している。以下を参考にしてほしい。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/95222?fbclid=IwY2xjawSVieFleHRuA2FlbQIxMQBzcnRjBmFwcF9pZBAyMjIwMzkxNzg4MjAwODkyAAEe4gk_DuFog132pbeh8X9WfYmwJABMeUFGMvaONClmpnGpnZWTRzvlBoWPGu4_aem_bbErJ7ZICJ7J2U0_YH9DoA

(記)文科省は違反とした根拠を具体的に説明したとの立場です。
(川) 政治的に中立かどうかを判断するのは、そもそも非常に難しいことです。目の前にいる生徒の持つ意見が一方に偏っていれば、あえて逆の意見に言及することもあるでしょう。一方の意見が当然とされているようなテーマであれば、あえて反対意見を扱うという判断があるかもしれません。
 政治的中立性は、専門職である教員が、そうした様々な要素を勘案しつつ学校活動の全体を通じて実現を図るものです。

ここまでは全く同感だ。このあと川口准教授は、以下のように続ける

(川)今回、文科省は学校にも聞き取りを行っているようですが、それでも本当に正しく判断できたと言えるか疑問が残ります。

おいおい、ちょっと待て。すでに学校法人同志社も文科省に指摘された事実を認めているではないか。准教授は、何を根拠に「疑問が残る」と言っているのか。学者ならその根拠を示すべきだろう。そんなことをせずに、「疑問が残る」と言うのは、印象操作でしかない。学者としてあるまじき行為・発言と言える。
 このあと、記者の主権者教育の充実について必要なことはという質問に対して、准教授は応えているが、すでに文科省が述べていることではないか。その上、より具体的に説明しろというのは、逆に中立性の幅を狭め、教育現場を委縮させることになる。

 もう一度言うが、今回の同志社国際高校の事例は、戦後教育基本法制定以降、極めて異例な事例なのである。左派の学者が言及することにより、さらに政治的中立性の運用の幅が狭まり、教育現場を委縮させることになる。この点については、日本大学の西田教授も指摘している。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP