大学生が塾通い


 面白い記事をみつけた。7月21日の朝日新聞に「大学入ったのに塾通い 単位取れない学生駆け込む」という見出しの記事だ。東京都内の難関私立大学の理系学部に進んだ女子学生の例が掲載されていた。

 入学直後から数学や物理、化学の講義の難しさ、スピードに圧倒されて、1年次の前期の単位を大半落としたという。そこで大学生向けの塾を探して辿り着いたのが、個別指導の「究進塾」である。定期試験の過去問を、大学の先輩たちから集め、週2回、1日2時間、講師が作成した模範回答をもとに何度も解いたという。

 なぜこのようなことが起こるか。この女子学生は指定校推薦で大学に合格しているのである。指定校推薦は大まか9月~10月で合否が決まる。この指定校推薦で合格した生徒と一般入試で合格した生徒の学力差は、雲泥の差なのだ。例えばその差は次のようなグラフになる。当然赤が一般受験まで頑張った生徒、青が指定校推薦の生徒の学力の伸び具合である。これは、私が個人的に言っているのではない。受験産業である河合塾やベネッセが、大量の受験生の結果に基づいて算出したデータだ。だから、彼らは言う。「最後まであきらめるな!」と。

 定期試験と比べて大学受験は、試験範囲が無い。そのため、模擬テスト等に結果が表れてくるまでに時間がかかるのである。そのため、受験生の中には、「果たして合格できるだろうか?」という不安が生まれてくる。
 一方大学の方も、学生数確保のために学校推薦型入試や総合選抜型入試の枠を増やし、早期に合格者を獲得しようとする。この二つのベクトルがうまく(かどうかはわからないが)噛み合ったのが、年内に実施されるこの二つの入試形態なのだ。

 現役生の受験生の学力というのは、11月ごろまでほぼ横ばい状態である。早くて12月ごろから成果が表れ始め、12月~1月にかけて急激に伸びる。そして、大学入学共通テストを終えてから、さらに急激に伸びていくのだ。だから、指定校推薦で入学した生徒と一般入試で入学した生徒との入学時の学力差は相当である。

 先ほど紹介した「究進塾」の話によると、塾に通う大学生と年内入試の入学者の増加はほぼ比例するらしい。「少なくとも理工系の学部では強い相関関係がある」という。年内入試で合格を決めてしまうと、一応授業では習うとは思うが、数学Ⅲが疎かになる。数学Ⅲは理工系学部にとっては、必須の教科・科目だ。それが疎かになってしまえば、大学の授業についていけなくなるのは、当然の帰結と言える。

 年内に合格を決めたい高校生、学生を多く獲得したい大学、このままでは益々日本の若者の学力が下がるのではないか。エマニュエル・トッド氏は、国力を表す数値として、理工系学生の割合を上げている。中国・インドはもちろん、現在戦争中のロシア・イランでも理工系学生の割合は欧米諸国よりも高いという。
 
 果たして日本の国力は、こんな状況で向上するのだろうか。高市総理も教育にもっと目を向けなければならない。


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