さて、昨日のブログでお約束した学校の「働き方改革の本質的な問題」です。なぜ、働き方改革が必要か、それも給特法を廃止して、他の労働者と同様に労働基準法の適用が必要か。その答えは、すでに学校現場に出ています。すなわち、教員不足という問題です。もう、これだけ学校現場がブラックになっていることを、若者たちは知っているのです。長時間労働だけではなく、保護者による過度な要求、それも理不尽な要求によるストレスから精神を病んでしまう状況にある学校現場を若者は知っています。だから、教員になることを敬遠するのです。このような状況が続けば、すぐにでも学校現場は崩壊していくでしょう。だから、学校の「働き方改革」は待ったなしなのです。
なぜ学校がブラックなのか。その本質的な問題は、義務教育から10代の若者を大人に育てるという教育活動のほとんどを学校が担っているからです。教育活動は、学校教育に加えて、家庭教育や社会教育(地域で担う教育)があります。ところが、日本の場合は、教育活動のほとんどの部分を学校で担っているのが現状です。そして、その学校への要求は、年を追うごとに増しています。何か不祥事が起これば、学校ではどんな教育をしているのかと世間は騒ぎます。こういう日本の教育に関する体質が、積もり積もって学校がブラックになっているのです。よって、働き方改革を推進し、学校のブラック化を解消するということは、学校教育が担っている現在の役割を軽減し、家庭や地域社会に適正に担ってもらうという根本的な制度変革・意識改革をしなければならないということになります。先日大阪府府議会の教育常任委員会での議論を紹介しましたが、あんな小手先の議論をしていてはだめだということを、政党の皆さんはしっかりと認識する必要があります。
それでは、どうすれば良いか?現在全国各地で議論され、進められている「部活動の地域移行」については、前述した学校教育から社会教育への任務移行の目玉と考えられるでしょう。この移行がどのように進められるかで、今後の学校のブラック化がどの程度解消されるかというメルクマールになると私は思います。保護者や自治体の関係者の方々に考えてほしいのが、この「部活動の地域移行」を実現するために、どれだけの費用が掛かるかです。特に、部活動を担う人材を確保するために、自治体や各家庭でどれだけのコストが掛かるかに注目してほしいと思います。その費用の分を、教員たちは、たかが4%の調整手当で「定額働かせ放題」として担ってきたのです。日本の教育が成立している背景には、教員の自己犠牲があるということを充分に認識すべきだと思います。特に、保護者はこの事をきちんと認識すべきです。
そして、この働き方改革を強烈に推進する手立てが、給特法の廃止なのです。給特法が廃止されれば、教員の残業には、残業手当を支給されなければなりません。もし給特法が廃止されたら、年間の残業手当が3000億円になると試算されていますが、逆に言うと現状は3000億円分のただ働きを教員がしているわけです。もし、給特法が廃止されれば、国も自治体も強烈に働き方改革を推進することが求められます。部活動の地域移行なんて、全国津々浦々まで徹底されるでしょう。学校単位で参加する様々な大会も大きく変化すると思われます。ゴールは、学校から教員が関わる部活動を無くすことです。グラウンドや体育館で部活動の指導をしているのは、教員では無く別の指導員が行っている。教員は職員室で自分の仕事をしたり、会議をしたりするというのがゴールです。
更に、給特法が廃止されれば、残業時間に関すル制限が厳しくなるでしょうから、学校における生徒指導の役割が限られ、生徒指導は家庭や地域が担うことになります。学校にたいして過度な負担になっているのは、実は生徒指導(児童指導)なのです。問題を起こす生徒への指導は、学校が担うのではなく家庭が担うことになるでしょう。部活動以外に時間外勤務を強いられるのは、生徒指導なんですから。そして、理不尽な保護者の要求も学校弁護士が対応するようになります。集団で学習することを乱すような生徒については、一定の改善が見込まれるまで家庭で教育をしていただく。改善が見られなかったり、学習状況が改善しなければ、欧米のように義務教育段階から「留年」するということまで必要です。義務教育は、いくら問題を起こしても、全然勉強せずに学年相応の学力がついていなくても進級できるのです。この現状が、教員に過度な仕事をどんどん積み重ねていくのです。
このように、働き方改革は、教育の在り方を根本的に変革していきます。学校が担う教育の役割を減らし、家庭・地域と適切な役割分担を行うことになります。そのためには、「定額働かせ放題」の給特法を廃止し、労働基準法を適用しなければならないのです。いくら給特法を改正しようとも、この教育の役割分担にメスを入れなければ、根本的な解決にはならないということを国民は気づかなければならないと思います。
そこで、政党の政策を検証してみました。自民党はもう言わずもがなですので除外するとして、公明党、立憲民主党、日本維新の会のマニュフェストを調べてみました。そうすると、次のようなことが書いてあります。
公明党・・・教職の魅力向上を図るため、教員の勤務実態調査の結果を踏まえ、時間外勤務手当を支給しない代わりに教職調整額を支給するとしている「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」を含め、教員の処遇の在り方等について検討を進めます。
何をしたいのかよくわからない、給特法は改正するのか廃止するのかを明らかにせず、「検討」です。次に、立憲民主党と日本維新の会を見てみましょう
立憲民主党・・・給特法(教育職員の給与に関する法律)の廃止を含めて教職員の処遇改善を行うとともに、部活については地域社会への移行など抜本的な見直しを行い、教職員の長時間労働を是正します。
日本維新の会・・・校務分掌や部活動の見直し、校務の情報化の推進などを通じて教員の負担軽減を図り、教育に専念できる体制を整えます。また、時間外勤務手当を支給しない代わりに教職調整額を支給するとしている給特法については廃止し、教員に対し労働基準法を全面的に適用する法整備を進め、教員の長時間労働の解消を進めます。
両党とも給特法の廃止について明文化しています。しかし、日本維新の会のほうが、より力強く書かれていることがわかると思います。来るべき衆議院選挙、秋にあるとかないとか巷では色々言われていますが、教員の皆さんは、この給特法について、どのような見解を持っているのかに注目して、投票するのが良いと思います。まさに教育の世界では、この給特法の取り扱いが政治の焦点になってほしいと思っています。
政党の皆さん、本気で「給特法」の廃止を考えていますか?
“政党の皆さん、本気で「給特法」の廃止を考えていますか?” への2件のフィードバック
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学校のブラック化の大きな要因はやはり2つではないかと思う。
中学校以上については部活動、そして、全校種、保護者対応。部活動については市町村単位で部活動ガイドラインが出されているが、私に言わせれば、アリバイ的な対応としか思えない。現に、例外が多すぎる。私も管理職をやってたころ、自分の勤務校にはガイドラインを守るよう厳しく伝えてきたつもりだが、「ほかの学校は・・・やっていますよ」などと言われると、口うるさく言うほうが嫌われたり馬鹿を見たりする。おそらくどの市町村にもあることだろう。行政機関はガイドラインを作ったことだけに満足しているのか?
もうひとつは保護者対応。これも管理職時代、数名のモンスター対応に苦慮した。保護者対応については、管理職以上に対応している学年や学級の教師が疲弊している。教育委員会は基本、丸く収めようとする姿勢。今一度、文科省をはじめとする行政機関はどこまでが学校教員の仕事であるかを国民全体に明らかにし、それにそぐわない保護者の過度の要求には、「学校としっかり話し合ってください」で済ませるのではなく、学校や教員を守るという立場で取り組んでいただきたい。
そして、学校管理職は、自己保身や行政の顔色伺いばかりを気にすることなく、教育現場の現状を正しく分析して、学校や教員を守るという立場で取り組んでいただきたい。
そういうところが変わっていかないと、若い人は教職からにげるばかりであろう。 -
おっしゃる通りだと思います。私も同じような経験をしました。教育委員会の指示をないがしろにする現場、モンスターペアレント、事なかれ主義の委員会、どれも問題だらけです
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