『正解を探す日本人、最適解をつくるインド人』(坂田幸樹 著)を読んだ。非常に面白い本である。ビジネス書ではあるが、ぜひ高校生にも薦めたい。日本とインドの文化論としても読み応えがある。
詳細は本書に譲るが、日本人は正解を求めてリスクを徹底的に除去しようとする。その背景には、業績評価が「減点主義」になっている点があるという。つまり「失敗しないための仕事の進め方」が染み付いているのだ。その結果、最初から100%の完成度を目指すあまり、準備や計画にコストを掛けすぎてビジネスチャンスを逃してしまう。
一方、インド人はどうか。彼らはまず70%の確信度で動き出し、走る中で修正していく。多様で変化の激しいインド社会では、最初から100%リスクを抑え込むこと自体が不可能だからだ。そのため、修正可能な「可逆的リスク」は実行しながら対処し、取り返しのつかない「不可逆的リスク」のみを事前に除去する。その判断基準が「70%」なのだという。
本書を読みながら頭に浮かんだのが、NHKの『プロジェクトX』だった。日本企業がビッグプロジェクトに挑むドキュメンタリー番組である。頭の中で、ナレーターの田口トモロヲ氏の声が聞こえてきた。
「計画は完璧だった。しかし、想定外の大問題が発生した――」
日本企業は計画段階で100%の完璧さを目指す。これは品質確保や均質性という面で日本の強みでもある。だが、どれほど完璧な計画を立てても、不確実な事態は必ず生じる。その不確実性を現場の努力と団結で乗り越えていく点に『プロジェクトX』の醍醐味があり、私たち日本人もそこに深く感動する。
しかし、インドでは『プロジェクトX』というドラマは成立しにくいのではないか。なぜなら、不確実性はあらかじめ織り込み済みであり、計画通りにいかないことこそが日常だからだ。そんな比較を思い浮かべながらページをめくった。
ひるがえって、学校現場はどうだろうか。「70%でGO」という発想は可能だろうか。現状、これは極めて難しい。ビジネスと異なり、教育の対象が「子どもという人間」だからだ。子どもにとって小学1年生という時期は一生に一度しか来ない。だからこそ教師は「失敗は許されない」と考え、計画段階で考え得るすべてのリスクを排除しようとする。
しかし、その姿勢が時に「やらないための理由探し」に見えてしまうこともある。教育改革が遅々として進まず、管理職が改革に二の足を踏んでしまう背景には、こうした「100%の安全を求める文化」があるのではないだろうか。
ビジネスと教育では前提条件が大きく異なる。だからこそ、教育における「リスク」と「最適解」のあり方を改めて考えさせられた。

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