学校は何をするところかー妹尾氏の提案

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 東洋経済のメールマガジンに、教育評論家の妹尾氏の論考が掲載されていた。次期学習指導要領の改訂作業が開始されるこの時期、もう一度原点に還って「日本の学校はどこに向かおうとしているのか」「学校の先生の役割ってなんだろう」ということを考えてみようという試みだ。読んでみて、この問題提起は重要だと思った。特に、現在の教育の課題は多岐にわたり、新しい教育の課題はどんどん学校現場に課せられている。「主体的・対話的で深い学び」から始まり「個別最適化の学び」が求められている。その一方で、教員の働き方改革を推進しなければならないのだ。前者は、学校の仕事を増大させ、後者は教員の仕事を減らす方向に向かなければならないのだ。逆方向のベクトルなのである。教育行政も学校の管理職も「綱渡りの学校経営」を強いられることになる。下図は、妹尾氏の主張の下に東洋経済が作成した図である。

学校の役割の縮小・拡大を横軸に、教員の役割の維持・拡大と縮小を縦軸にとった図式である。良くまとまっている。この図式をベースに今後の学校の役割を議論するのは良いことだろう。
 私の意見は、図では「Ⅳ」に該当する部分についてである。学校の役割は維持・拡大しながら、教員の役割は縮小していくというものである。これはかなり難しい。妹尾氏の指摘通り、学校現場にもっと人材を投入しなければならない。SCは当然の事であり、SSW、キャリアコンサルタントも必要だろう。そして、さらに教員定数を見直し、教師を増やさなければならない。

 私が、校長をしている時にちょうど探究学習が提案された。現行学習指導要領の先行実施として、高校でも「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」に改定された。多くの府立高校が、「総合的な学習の時間」と同じような学習計画を立案し、府教育庁から再考を指摘された中で、私は次のような試みを行った。
 探究学習で負担になることは、
①教材の開発 ②外部連携の開発 ③教員の意欲喚起(研修や会議の運営)
である。探究学習の主担になる先生の負担は、尋常ではない。そこで、新しい教育の課題への挑戦と教員の負担を増やさないことを同時に成立させるために、外部の教育産業を導入した。それが「教育と探求社」の「クエストエデュケーション」である。当時は、大阪府の私立高校で実践されていたが、府立高校では初めての導入だった。この「クエストエデュケーション」の教育効果はかなり大きかった。生徒の意見もほとんどが肯定的な意見であったし、自身の成長に結びついたと評価していた。グループ討論も数多く経験することで、修学旅行で経験したワークショップでも「これほど活発に、そしてすぐにグループ討議ができる高校は初めてです」と主催者に褒めていただいた。
 教員の負担はというと、教材・外部連携の開発・研修はすべて「教育と探求社」が担い、教員は教材を目の前の生徒に落とし込んでいくことに力点を置くことができたのである。新しいことに挑戦したわけであるから、当然教員の負担感もあっただろうが、全ての探究学習を教員が最初から自前でおこなったわけではなく、多くの部分をアウトソーシングしたわけである。この実践は、論文にまとめ教育経営学会の分科会で発表した。確か妹尾氏も同じ分科会で発表されていたと思う。

 学校の役割を縮小するのは至難の業である。さらに世界レベルで教育は大きな変革期を迎えている。日本の教育が世界から遅れないためにも、学校の役割を縮小するのは困難だ。縮小するとすれば、家庭教育・社会教育の役割を増大させなければならないし、その理解を日本社会全体で得なければならない。相当な時間がかかるだろう。それならば、学校に人材を投入する、アウトソーシングを促進することで、教員の負担軽減を図ることの方が重要ではないかと思う。

東洋経済 妹尾氏の論考


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