保護者対応の民間窓口ー「はて?」

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 1月7日の読売新聞に、久しぶりに教育の話題が掲載された。文科省が教員の働き方改革を進めるために、保護者対応を民間の事業者に委託するモデル事業を開始するらしい。文科省によると、すでに自治体の対応で同じように民間委託する事業が導入されているという。保護者から電話やチャットで連絡を受けて、内容に応じて直接回答したり、教育委員会や学校につないだりすることで、教員が直接対応する時間を軽減するというものだ。

 寅ちゃん風に「はて?」である。果たして効果があるのだろうか?効果があるとすれば、次の点だろう。モンスターペアレントと呼ばれる保護者は、自分の主張が受け入れられるまで、長々と話す。電話で1時間、直接対応で2時間を超えることもざらだ。保護者の主張も何が言いたいのか整理されておらず、問題点が見えてこないことも多い。ひたすら自分の鬱憤を学校(直接的には担任であったり、管理職であったりする)にぶつけてくる。このような保護者に相当時間を割かれるというのが、学校の実態だ。間に民間委託業者が入ると、この訳のわからない不満だけをたらたらと聞く時間が少なくなるのではないかと予想される。保護者の主張を整理して学校に伝えてもらえれば、学校現場としてはとてもありがたい。ただ、このモデル事業で効果があるのは、この点ぐらいではないだろうか?

 文科省は、市役所の事業をモデルにしているようだが、市役所が担う行政と学校が担う教育活動では、大きく違うところがある。市役所の仕事のほとんどは、法令に基づいて行われており、個々の役人の裁量というのは限られている。そのため、民間委託業者でも市役所の業務内容がわかっていれば、「法令に基づく説明」をしやすい。ところが、学校も法令に基づいて教育活動が行われているとはいえ、仕事の相手は児童・生徒のため、個別の対応が求められることも多く、現場の裁量も多くあり、校長の判断を求められることも少なくない。私が校長をしていた時も、判断が付きにくい問題について教育委員会に相談しても、最終的には「それは校長の判断でお願いします」と言われたことは何回もある。学校では、教育委員会でさえ判断ができず現場任せにするような微妙な問題が、日常茶飯事で起こっているのだ。民間がこのような問題に対応しても、結局は学校に対応を委ねなければならず、市役所のようにはいかない。だから、問題点の整理という意味では効果があるかもしれないが、それほど大きな効果をもたらさないというのが私の意見だ。

 そうすれば、どうすればよいか。民間に委託するような事業の予算があるなら、経験豊富な元教員(管理職経験者が良い)を2校か3校に1人配置する(本当は1校1人が良いが)方が良い。学校の現場で何が起こっているかを常に知っており、保護者の要望に対して学校の実情を知ったうえで対応できる人員の配置が望ましい。保護者の要望が少なく時間があるときは、学校の他の業務のサポートをしてもらえば良いのだ。

はて?保護者対応をする事業に手を挙げる民間業者はあるのだろうか?


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