「いい人」はやめよう

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 昨日ブログにも書いた公立学校共済の調査結果で、高ストレス者が最高値を示した件である。この件で、その原因の一つに「保護者対応」が挙げられている。2016年の調査では、ストレスの要因調査に「保護者対応」を挙げた教職員は20代で、14.3%、30代が14.8%である。ところが、2022年調査では、20代が17.4%、30代が17.6%に伸びているのだ。伸び率で換算すると、トップクラスになる。理不尽な要求をしてくる「モンスターペアレンツ」への対応は、神経をすり減らすし、体力も奪われるのだ。そこで、提案したい。もう教職員は「いい人」であることをやめようと。

 教職に就く人間は、とにかく人の役に立ちたいと考えている人が多い。また、そうでないと教職は務まらないだろう。だから、児童・生徒のため、保護者のためと考え、できる限りその要望に応えようとする。それが、常識の範囲なら全然構わないし、逆にきちんと対応しなければならない。ところが、明らかに常識の範囲を超える要求や理不尽な要求をしてくる場合がある。例えば、クラス替えである。私が教職に就いたころには、「〇〇さんと同じクラスにしないでほしい」というような要求は、一切なかったし、あったとしても学年主任や管理職というベテランの先生がきちんと対応してくれていた。しかし、今では日常茶飯事にある。
 年度末に次年度のクラス編成作業で、教職員は多大な労力を強いられるのだ。例えば、発達障害の生徒の支援のために、同じクラスにする、またはしないなどの選択は、十分に考慮されるべきだろう。しかし、「仲が悪い」、「合わない」などの理由で、また2年も3年も前にあった事象を理由で、クラス編成に口出しをしてくる親がいる。それも、3クラスしかないのに、4人も5人もを対象に「同じクラスにしないでくれ」と言ってくるのだ。どう考えても無理だろう。こういう場合は、安易に要求を受け入れるべきではないだろう。きちんとやれることとやれないことを保護者に伝えるべきだ。

 世の中は、「カスタマーハラスメント」に対して、きちんと対応する方向に向いている。旅館業界もそうだし、6月28日にはJALやANAも共同でカスハラ対策を公表した。厚生労働省は「カスタマーハラスメント企業対策マニュアル」も公表されているのだ。文科省や各都道府県教育委員会も「カスタマー(保護者)ハラスメント対策」を出すべきではないかと思う。そして、校長・教頭も保護者に対して言うべきことはきちんと言い、毅然と対応すべきではないか。教職員が精神的に追いつめられるのは、理不尽な保護者要求に対して、管理職からのサポートもなく対応させられる場合だ。管理職によっては、教職員に保護者対応を丸投げするようなケースさえある。以前に紹介した朝日新書「何が教師を壊すのかー追いつめられる先生たちのリアルー」には、管理職から丸投げされて苦しむ教師の姿がリポートされていた。

 もう、教師は「いい人であること」をやめよう。言うべきことはきちんと言うことが必要だ。文科省もそういう流れをきちんと作ってほしい。


“「いい人」はやめよう” への1件のコメント

  1. NORIMI FUjIMOTOのアバター
    NORIMI FUjIMOTO

    全く同感。
    教育現場こそ、カスタマーハラスメント対策をすべき。
    保護者対策を管理職が教諭任せにするのは、ご自分に力がないことへの現れ。
    学校任せにする教育委員会もお粗末。
    理不尽なことには、理不尽だと態度を明らかにすべき。
    理不尽な件にあまりにも時間がとられすぎて、本来、つけなければいけない力を若手の教員につけられていない学校現場にテコ入れしなければならない時期が本当に来ていると思う。

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