スマホの恐ろしさ


 電車に乗っていて、スマホに目を落としている人がほとんどという風景は、もうずっと前からある。仕方ないと思っていたが、スマホが日本人の美徳まで壊しているのではないかと思うことがある。

 南海電車を使って私は通勤している。仕事が終わって難波駅から電車に乗ったとき、すでに電車は到着していたので、席には多くの乗客が座っていた。私は座ることを諦めていたが、一つだけ席は空いていた。空いた席に向かって左に高校生の男子、右に若い女性2名が座っていた。ただ、成人男性の私が座るには窮屈なので立っていようと思った。すると、小柄な中年女性が電車に乗ってきて、その空席の前に立った。普通なら、というのか昔なら席を詰めて空いているスペースを作る。今回も男子高校生も若い女性も(特に若い女性は余裕をもって座っていた)、スペースを作ると思っていた。ところが、この3人はずっとスマホを見続け、スペースを空ける気配は一切ない。「何なんだ、この人らは!」と思っていたら、小柄な女性は空いたスペースに座った。それでも、この3人はスペースを作ろうとせず、ひたすらスマホを見続けている。「なんという時代になってしまったのか」とため息が漏れた。

 同じ日、河内長野の駅に着いたら雨がぽつぽつしてきた。バスに乗って帰ろうとバス停に行った。バス停には、3つのベンチが並んでいる。ベンチは余裕で3人は座れる。一番端のベンチには女性が一人、2番目のベンチには中年の男性が座り、3番目のベンチには中年男性と女性が座っていた。バスを利用しようという人たちが並び始め、ベンチの横に並び始めた。普通は、空いている席を詰めようとするだろう。しかし、2番目のベンチに座っている中年男性はスマホから目を離さない。雨も降ってきたので、「いい加減に気づいたらどうや!」と思っていたら、3番目の席に座っていた中年男性(いかにも昔ヤンキーだった風の男性)が、おもむろに立ち上がり、スマホを見ていた男性に「あんた、バス乗るんか、乗るんやったらスマホ見てらんと席を詰めたらどうや。雨降って濡れている人もおるやないか」と注意した。

 その時だ。初老の男性が、1番目のベンチにスーッと座った。「なんと間が悪い!」と思ったら、案の定、ヤンキーおじさんが、「おい!何割り込んどるねん!ちゃんとならばんかい!」と怒気を含んだ声で怒鳴った。声をかけられた初老の男性は、みんなが並んでいることをわかっていなかったようで(それもどうかと思うが)、すごすごと列の後ろに並んだ。最初に注意された中年男性も席を詰めたらよいだけなのに、何を思ったか(おそらくヤンキーおじさんが怖かったのだろう)、この人も後ろに並んだ。

 二つとも同じ日に起こったことだが、いずれもスマホを見続けることにより、周囲が見えていないために起こったことだ。日本人ってこんな気質だっただろうか。日本人って必要以上に周囲に気を使い、和を保とうとする気質があったように思っていたが、日本人の美徳(私は、美徳とは言い切れないと思っているが)もスマホが喪失させているのではないかと感じた。

スマホって恐ろしいですよね。


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