人新世の黙示録


 斎藤幸平氏の「人新世の黙示録」を読んだ。斎藤氏は筋金入りのマルクス主義者である。この本は、「人新世の資本論」に続く第2段である。1冊目も読んだが、斎藤氏は1冊目の本だけではダメだという問題意識からスタートしている。それは、 温暖化による環境破壊が修復不可能になってきており、地球環境に亀裂が生じているという認識からだ。

 人新世とは、「人類の活動が地球の環境や生態系、地質に大きな影響を与えるようになった現代」を指す言葉だ。斎藤氏は、市場に任せておけば何とかなるという新自由主義を痛烈に批判している。それだけではなく、様々な人類の資源を、GAFAMを中心とするIT国際企業が、自らの生存をかけて独占しているという事だ。これからの世は、人類が生き残るための生存に向けた競争が始まるにも関わらず、新自由主義者は自らの生存のみをめざしている。彼はこれをテクノファシズムと呼ぶ。

 この状況を打破するために、彼が提案するのは「暗黒社会主義」であり、それを実現するための手段が「エコロジー独裁」という権力である。彼は、未来に成長を見いだしていない。戦時経済を参考に配給制さえも視野に入れている。どうしようもない暗い未来だ。彼の描く社会は、楽観主義とは無縁だ。

 何とも言えない斎藤氏の持論だが、ネパールの大洪水を目のあたりにすると、彼の言っていることが、決して根拠のないものとは言えない。欧州での高熱波や相次ぐ日本での水害なども温暖化の影響である。ネパールの大洪水は、1000人を超える死者を出し、4000人を超える行方不明者を出している。まさに未曽有の災害である。

 彼は、「暗黒社会主義」に向けた「エコロジー独裁」の実践を、南米の社会主義政権の取組にその萌芽を見いだしている。しかし、いずれの取組もアメリカに潰されている。彼は、変わるべきは、グローバルサウスではなくグローバルノースだと彼は言う。確かにそうだろう。しかし、グローバルノースが変わるのだろうか。一国で「エコロジー独裁」を打ち立てることが可能だろうか。この疑問が浮かんだ時、レーニンの「一国社会主義革命論」とトロツキーの「世界同時革命論」を思い出した。果たして、斎藤氏は「暗黒社会主義」への道筋をどのように描くのだろうか。

 確かに新自由主義の権化であるトランプ政権の足元のニューヨークで、民主社会主義者である市長が誕生した。他の州でも誕生しているという。11月の中間選挙がどのような結果になるのか、楽しみである。
 この本は、マルクス・エンゲルスが書いた「共産党宣言」に対する斎藤氏の「暗黒社会主義宣言」と言える本だ。


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