6月20日の読売新聞の関西経済の欄に、国立情報学研究所の新井紀子教授の広論セミナーでの講演会の内容が掲載されていた。演題は「AIがもたらすビジネスと人材育成への不可避な変化」である。
読んでいて面白いと思ったのは、次の部分だ。
「会社組織において上位2割の層は生成AIの問題を把握しながら使いこなし、生産性は3倍以上に向上するだろう。
だが、中位層はまず、目的の回答を正確に引き出すための指示設計の段階でつまずく。」
「また、構成員のおよそ半分以上が生成AIの出力結果を正確に読み解くことができないというのが現状だろう」
新井氏は、生成AIの出した結果のファクトチェックができるかという事が非常に重要であるという。要は、AIの結果を鵜呑みしてしまうことが、最大の誤りだというのである。どこやらのプロ野球の監督の家庭内暴力事件が想起される。
また、新井氏が開発した「リーディングスキルテスト」の結果も興味深い。50万人が受験したというからかなり信ぴょう性が高い結果である。その結果によると、
「中学生の結果を参照した際に、このテストの能力値と高校受験の偏差値との間に、非常に高い相関関係が見られた。」
「自分で読み解く能力を有する生徒は教科書と参考書と問題集さえあれば自力で学習できて、効率性に優れている。与えられた時間が同じならば、その中で最も良い結果を出すのは当然だと言える」
と述べている。この新井氏の発言を読んで思い出したのが、高校の同窓たちだ。一応、学区のトップ校に進学したのだが、決して私は頭が良い秀才タイプではない。努力を積み重ねなければ、到底高校の授業についていけないタイプだ。しかし、同じ教室には、秀才タイプの同窓がいた。記憶力も抜群に良いし(ノートを取らなくても先生の板書が頭に残る)、理解も早いし、また深い。更に今で言う批判的思考力も優れていて、別の視点からの意見も述べるという同級生がいた。新井氏の言う「シン読解力」を身につけていたのだろう。
また、このテストで「社会人を対象としたテストで意外な結果が得られた」という。有名企業の新入社員の中に一般的な中学生レベルの読解力しかない人材が1~4割混じっているというのだ。
「5段階で一番低い段階の社員は、おそらく契約書も正確に読むことができないだろうし、会社のコンプライアンスを順守することも難しいのではないか」
と新井氏は指摘する。AIが益々日常的に利用されるようになる21世紀にとって、人の読解力が低下すれば、益々AIに支配される世の中になるだろう。教育の在り方も根本的に変わってくる。「シン読解力」を育てるにはどのような教育が必要なのか、真剣に考えなければならない。デジタル教科書の導入は、「シン読解力」の育成に役立つのだろうか。私は決してそうは思わない。余計に「読解力の欠如」を生み出すのではないかと危惧している。

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