東京にICC事務所を


 ICCの赤根所長が、アメリカから制裁を受けた。トランプが制裁を行ったのは、ICCがイスラエルのネタニヤフに対して逮捕状を出したことがきっかけになっているという。このことで突然注目されることになったICCとその所長である赤根氏であるが、ICCの事を何も知らなかったので、この際少し勉強したいと思い、文春新書の「戦争犯罪と闘う」(赤根氏著)を読んでみた。

 読んだ感想は、「ICCって、『法の支配』に関して、ものすごく重要な国際機関や!」という事だ。ICCの存在を知っていても、その役割はどのようなものなのか、詳しく知らない人が多いと思う。私もその一人だ。ICCが対象とする犯罪で「中核的犯罪」と言われるものがある。以下、その内容を列挙する。
(1)ジェノサイド犯罪
  ①当該集団の構成員を殺害すること
  ②当該集団の構成員の身体又は精神に重大な害を与えること
  ③当該集団の全部又は一部に対し、身体的破壊をもたらすことを意図した生活条件を故意に課すること。
  ④当該集団内部の出生を妨げることを意図する措置をとること
  ⑤当該集団の児童を他の集団に強制的に移すこと
(2)人道に対する犯罪
  ①殺人
  ②絶滅させる行為   
  ③奴隷化すること
  ④住民の追放又は強制移送
  ⑤国際法の基本的な規制に違反する拘禁その他の身体的な自由の著しいはく奪
  ⑥拷問
  ⑦強姦、性的な奴隷、強制売春、強いられた妊娠状態の継続、強制断種その他あらゆる形態の性的暴力であってこれらと同等の重大性を有するもの
  ➇政治的、人種的、国民的、民族的、文化的又は宗教的な理由、第3項に定義する性に関わる理由その他国際法の下で許容されないことが普遍的に認めている理由に基づく特定の集団又は共同体に対する迫害であって、この1項に掲げる行為又は裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪を伴うもの
  ⑨人の強制失踪
  ⑩アパルトヘイト犯罪
  ⑪その他の同様の性質を有する非人道的な行為であって、身体又は心身の健康に対して故意に重い苦痛を与え、または重大な障害を加えるもの
(3)戦争犯罪
(4)侵略犯罪
(以上 上記の著p83~p88より抜粋)

 このような犯罪を対象としているICCは、まさに「法の支配」の砦であろう。日本は安倍内閣以降、「法の支配」を世界に訴えている。ICCの危機、赤根氏の窮状に対して、日本は率先して支援をすべきだろう。

 ところが、実際はそうはなっていない。高市首相は今回のアメリカの制裁措置に対して厳しく対応しているとは言えない。遺憾の意を表明した程度で、厳しく抗議したとは言えないだろう。日本政府は、ICCへの支援に消極的なのだ。赤根氏は、日本に対して3つの事を求めている。
 一つ目は、ICCの東京事務所の開設である。意図するところは、ICC活動を活発にし、アジア諸国のICC加盟を増やしたいという事、ICCに興味を持つ若い人たちを増やし、将来的にはICCで働くようになってほしいという事である。
 二つ目は、日本がICCの中核的犯罪に関する国内法整備を進めることである。平和ボケした日本では、ジェノサイドや人道に関する犯罪などは起こらないと考えがちだが、韓国もドイツも法を整備しているという。実際、法を整備したドイツではシリアで中核的犯罪を起こし、ドイツに亡命した人間を逮捕している。
 三つ目は、ジェノサイド条約の批准だ。この条約は、すでに世界で150か国以上が加盟しており、ICCに関するローマ協定を批准していないアメリカ、中国、ロシアも批准している。日本政府は「慎重に検討する」という姿勢らしいが、赤根氏が言うように「なぜ慎重に検討する必要があるのか」という事だ。

 とにかく、今ICCは存続の危機にある。「法の支配」は、大国がやりたい放題になりつつある国際情勢の中で、極めて重要なことだ。日本が、将来に不当な支配を受けないためにも「法の支配」は訴え続けなければならない。高市首相は「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」というのなら、まさにICC支援こそ「世界の真ん中で咲き誇る」外交ではないか。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

トップへ戻る