キャリア教育の欠如


 朝日新聞の教育欄に「中学受験その後」という連載が掲載されている。10月4日付の記事には「勉強に違和感 将来のイメージわかない」という見出しで、東京都の19歳男性の体験が紹介されていた。彼は第一志望であった難関私立の中高一貫校――いわゆる「御三家」と呼ばれる名門校に合格し、入学したという。

 記事を読むと、この男性が自身のステータスや周囲の雰囲気に流される形で大学を選んでいた点に大きな問題を感じる。周囲が当然のように高偏差値の大学を目指すため、彼自身も東京・早稲田・慶應義塾といった大学を軸に志望校を考えていたようだ。しかし、この記事で提示されていない重要な視点がある。それは「どの学部を選んだのか」という点だ。「とりあえず文系を選んだ」とあるが、具体的にどのような学問を修めようとしたのかは見えてこない。

 大学進学において本来最も重要なのは、「どの学部を選ぶか」である。学部の選択こそが、その後の人生設計やキャリア形成に直結するからだ。それゆえ、偏差値帯が近い大学を同列に並べて選ぶのではなく、自分が何を学びたいかを起点に、同じ学部系統の中で本命・併願校を選択していくべきではないか。はたして進学実績を重視する中高一貫校で、こうした視点に立った指導が十分に行われているだろうか。要するに、自らの人生を主体的に設計するための「キャリア教育」が欠落していることが根本的な問題なのだ。

 キャリア教育の本質とは、詰まるところ「自分はどのような手段で社会に貢献し、生計を立てていくのか」を模索することにある。この19歳の男性は、これまでそうした問いに向き合う機会があっただろうか。そして学校は、彼にそれを考えさせただろうか。彼は東大こそ不合格だったものの有名私立大学には合格しており、非常に優秀な若者であることは間違いない。そうした優秀な人材が、目的意識を持たないまま貴重な時期を過ごしてしまうのは、実に惜しいことである。

 日本の若者には、自分の能力をいかに社会に役立てるかという視点を強く持ってほしい。世界に目を向ければ、明日を生きるために必死になっている同世代も数多く存在する。恵まれた環境に身を置きながら目的を見失っている現状に危うさを感じるとともに、自らの人生や社会に対して、より切実な問題意識を持って向き合ってほしいと願ってやまない。


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