教師という仕事を選んでもらうための本気の議論

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 あまり買わないのだが、「教職研修」という雑誌がある。10月号の特集で「教師という仕事を選んでもらうための本気の議論」が組まれていたので買ってみた。その中で、座談会が掲載されていた。以前から存じ上げている立教大学の中原教授、兵教大でもお世話になった弁護士資格を持っておられる神内准教授が参加されていた。

 中原教授の指摘が一番的を得ていると思った。中原教授は、
「今、日本の全産業が人手不足で、・・・すべての産業が『選ばれるか、選ばれないか」というところでせめぎあっています。(中略)学校教育界は長時間労働是正という、マイナスをゼロに戻す段階です。他の産業は、働きがいを持つことができて成長実感を得られ、ウェルビーイングを高めようという段階で勝負しています。」
と指摘している。まさにその通り。各自治体の教員採用担当者も、民間会社がどのように求人活動をしているのか、もっと研究する必要があるだろう。民間がゼロをプラスにする求人をしているのに、教育界はマイナスをゼロにする取り組みをしているというこのギャップ。正直、教員を志望する若者が、減少するのも当然だろう。

 「オッ」と思ったのは、給特法に関する議論であることだ。東京大学の名誉教授である小川正人先生、「給特法は廃止すべき」と論じている。理由は、長時間労働抑制のインセンティブが働くこと、課題は財源の確保と指摘している。このように給特法の是非について公に議論している記事を、私は初めて見たので、嬉しさを感じた。神内准教授は、給特法を維持しても廃止しても教員の給与体系自体に問題があると指摘する。校長・教頭に加えて、副校長・主幹教諭・指導教諭などの役職を追加しても、学校組織で大きな権限を持っているのは、校長のみの鍋蓋組織である。本来なら、学年主任・〇〇主事(部長)も管理職としての権限(人事権と決裁権)を持つべきであるが、そうはなっていない。神内准教授も中原教授も、教員の給与体系について見直すべきだと踏み込んでいるは、働き方改革の新しい視点かもしれない。

 妹尾氏が、給特法改正のシミュレーションをしている。彼の意見は、大学教員のように裁量労働制にしてはどうかという意見である。年齢で給与を決めるのだろうか。職階で決めるのだろうか。なかなか、大学のようにうまくいくかどうか疑問も大きいが、議論に値するかもしれない。

 とにかく、以前から私が主張している「給特法の廃止」を正面切って教育界の重鎮が取り上げていることについて、少し希望を持つことができた。


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