昨日、「データは切り方が大切」とブログに書いたが、今日、新聞を読んでいると「データで野球部は変わる」という記事が載っていた。興味を惹かれて読んでみると、なるほど面白い。「キレがいい球」を数値化するというのである。野球のゲームを観ていても、球速がそれほど速くない投手が三振のヤマを築くとき、プロの解説者が「あの投手の球はキレがいいんですよ。打者の手前で伸びる」という表現をする。素人目には、そしてテレビを見ているだけでは、「そうなの?」としか思えない解説である。そのことに、トラックマン社野球部門責任者の星川氏は、球の初速度、回転数、回転軸方向、球の変化量、リリースポイント、本塁上の球速や通過した場所、ベース上の入射角度の縦と横を測定することで、この「球のキレ」を数値化したというのである。すごいなと思い読み進めていた。それだけでは、ブログに書こうとは思わなかったが、後半を読むにつれて、この星川さんの素晴らしさが分かった。だからブログに書こうと思った。
星川さんが最も関心を抱くのは、プロなどの一線で活躍する選手ではなく、ごく普通の高校生たちだという。「今の部活動のあり方、野球部のあり方を変えないといけないと思っています。」というのである。野球というスポーツは、高校野球までが最も端的であるが、打者は、一球一球ベンチを振り返り、監督のサインを確認する。そしてその指示通りにプレイする。指示通りにプレイできる技量を高めることも大事だが、自分で考えるべきことがどこまで考えられているのかと、以前から私は思っていた。星川氏も指示通り行うことが「あまりにも多すぎる。」「自分たちで考えて、行動したっていいと思います。」と指摘している。指導においても監督から「ここがだめだからこうしろ。」と言われると、選手は「はい」としか答えられない状況であった。だが、この「データの見える化」によって、データが選手と監督の間で共有されれば、客観的な数値を根拠に「自分はこう思うのですが・・・」と選手が自分で考えるようになるというのである。星川氏は、「社会に出た時に、物事を見る力、考える力を養うには、自分が打ち込んでいる部活動は適した場」という。その通りだ。
ラグビーワールドカップがフランスで開幕した。昨日開幕戦のフランス対ニュージーランドが行われた。好カードである。結果は、まさかのニュージーランドの敗退。1次リーグで初めての敗退らしい。いつも思うのだが、試合中監督はほとんど指示を出さない。選手交代のタイミングははかっているが、監督は観客と同じ観客席で試合を観察している。おそらく、ハーフタイムには細かく指示を出し、修正すべき点を指示していると思われるが、試合中はほぼ沈黙である。試合の運び方や戦略・戦術、その時々の判断は、グラウンドに立っているプレイヤーに任されている。キックをするのか、ゴールを狙うのか、それとも即攻撃に移るのか、いちいち監督の指示を求めない。グラウンドのプレイヤーが決めるのである。これが野球とラグビーの決定的な差だと改めて思った。
この星川さんの試み、是非とも高校野球に定着してほしいと思う。指示待ち人間では、もう世の中に通用しないのである。なんせVUCAの時代だから。
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