魔改造の夜ー「なぜ?」を考えたら感動できない!


 NHKの木曜日夜7時30分から月に1回、「魔改造の夜」という番組が放映されている。NHKらしくないコンセプトで、エンターテイメント満載の番組だ。この番組のテーマは、既存にあるいろいろな物ーそれは家電製品であったり、おもちゃであったりするーを改造して,TOPを競う番組だ。8月31日に放映されたのは、なんと「洗濯物干し25mロープ走」だ。洗濯物干しにタオルとTシャツを干して、その物干しを25mのロープを走らせる。一番速いタイムで走り切ったチームが勝利を得る。ゲストの伊集院光が言ったように「何を考えて、物干しを25mも走らせるのか。私は、そんなことをしたい思ったことは一度もない」のである。この改造のテーマ、「何のために・・・」と考えたらいけない。この物干しロープ競争以外にも、
第1回「トラちゃんウサちゃん50mリレー」
第2回「鳩時計ハト入れ」
第3回「トースター高跳び」
第4回「パンダちゃん大玉転がし」
と放送された。何なんだ!これは!と思いたくなる番組だ。
エントリーするチームも、〇〇高専や地元の下町ロケットならぬ下町魔改造会社、そして世界にも名が通るTOP企業が参戦する。いい大人である。期間は1か月半。学生も大人も本気で取り組んでいるから面白い。要するに、この番組、モノづくりの真髄が詰まった番組なのだ。誰も想像だにしないテーマに、奇想天外なアイデアで挑み、己の技術力をかけて改造する。まさにモノづくりに携わる者としては、面白くて面白くてたまらないのだと思う。
 今回の「物干し25mロープ走」、全てのチームがドローンを応用したプロペラを設置していた。解決すべき課題は2つ。プロペラ機をいくつつけるか。多くつけた方が推進力は増す。しかし、重くなるため逆にスピードが落ちる。いくつプロペラ機をつけるかが、一つの勝負どころである。もう一つは、初速をどう確保するか。プロペラでは動き出すまでの時間ロスがある。ここが最大のアイデアのポイントだ。N高専は、この初速確保にジェット噴射を使った。これには、TOP企業も唸った。「そうきたか・・・・」である。
 試技は2回。ところが、どのチームも1回目は失敗した。何たることかである。10分の調整時間を経て、2回目の試技である。最初のチームは、N高専。なんと、初めて25mを完走した。目標タイムには届かなかったが、完走したのである。1回目の試技ですべてのチームが失敗したうえでの完走だ。N高専の学生はもちろん、ゲストやコメンテーターの目にも涙が溢れた。浮かんだのではない。溢れているのだ。さらに、他のチームの大人たちまで涙している。そこには、モノ作りにあこがれ、モノ作りが好きで、モノ作りに青春をかけてきた自らの人生と重なる溢れんばかりの過去の体験があったのだろう。その涙、涙、涙に、アナウンサーまで涙していた。私も涙した。なんでこんなに感動するのか。考えれば、洗濯物干しを25m走らすのである。何の意味がそこにあるのか。しかし、そんな考えを凌駕するモノ作りへの思いが、ここにある。だから、感動するのだろう。
NHKらしからぬ面白いエンターテイメントだ。


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