8月7日、夜10時、いつもなら「映像の世紀-バタフライエフェクト」が放送される時間に標記のスペシャル番組が放映された。この「ご進講メモ」、宮内庁御用掛・松田道一の膨大なメモである。12年間、509回に及ぶご進講は、昭和天皇の戦争への開戦、そして終戦に対して大きな影響を与えたという。思わず、最後まで見てしまった。詳しい内容は、NHKの見逃し配信などで見ていただきたいが、松田氏は、数少ない英米協調派であること、しかしながらドイツの電撃作戦の成功により、やがて欧州はドイツが影響力を拡大することなどを昭和天皇に講義したことが、ご進講メモからわかったらしい。
興味深いのは、昭和天皇が、「ご下問」として、松田氏に随所で質問している点である。戦前の昭和天皇が複雑かつ急展開していく国際情勢の何に関心を示していたのか、非常にリアルに判る。報道内容からすれば、昭和天皇は、様々な情報を得ており、日本の取るべき道についても確固たる判断をしていたように伺える。まさに「昭和史を書き換える」資料である。この番組を見ている途中から、私達が抱いていた(私だけかもしれないが)天皇の統治に関するイメージが変わってきた。太平洋戦争が終結した時点で、東京裁判でも「天皇の戦争責任」は追及されなかった。その理由として、「君臨すれど統治せず」という立憲君主制の天皇という路線で、日本側が主張したからであり、実際に戦争を遂行したのは東条英機以下、政府の高官及び軍首脳部であるとしたからだ。どこで教わったかはわからない。しかし、戦後民主主義教育を受けて育ってきた私の中には、こんなイメージが戦前の昭和天皇にある。しかし、このご進講メモ、果たして昭和天皇はどこまで戦争に関わっていたのか、当時の政策決定にどのように関わってきたのか、そしてその責任の重さはどれほどのものなのか。さらなる研究が待たれる。
この番組が放映される日から一冊の本を読みだした。それは、「日本の戦争はいかに始まったか」(新潮選書)である。現在から太平洋戦争敗戦までの流れを見てしまうと、明治維新以降、日本は一貫して帝国主義の道をひた走っていたように見える。しかし、果たしてそうだろうか、という疑問をこの本は投げかけている。1945年までの明治・大正・昭和の時代、日本は、約10年おきに戦争や事変を起こしてきた。この時代を戦争の時代と捉え、研究者達が「『引き返し不能点』(ターニング・ノー・リターン)はどこだったのか」を探っている。すでに日清・日露戦争を読み終えた。日清戦争については、かなり複雑な様相を呈していたことが改めて確認された。詳しくは、本を読んでほしいが、南下政策をとるロシアに対して日清同盟の可能性、そしてそこにロシアと対立するイギリスが参加する可能性が十分にあったというのである。しからば、なぜ戦争になったか。最後は、「清は信じられないという猜疑心」と専門家は断言する。この本、現在の国際情勢を考えるうえで、極めて有益であると思う。読み終えたら、またコメントしたい。
最後に、「昭和天皇は、戦争にどう関わっていたか」という章がある。第7章である。早くこの章にたどり着きたいと思う。
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