高校カリキュラムの歪み


 読売新聞の連載である「教育ルネサンス」、現在は「データサイエンス」のシリーズである。データサイエンスは、文系・理系を問わず、データ分析を扱うすべての領域に必要な素養であり、現在のようにビッグデータを扱い、社会課題の解決やビジネスチャンスを産み出すうえでは、必須の学問になった。8月3日の連載3回目の記事には、京都女子大のデータサイエンス学部を取り上げている。この学部は「入学後に数学を丁寧にサポート」を掲げているらしい。というのも、この学部の一般選抜は数学を必須としているが、高校1年生で学ぶ数学Ⅰ・Aだけでも可能だ。データサイエンスを学ぶには、最低でも数学Ⅱ・Bまでの学習が必要である。データサイエンスで飯を食っていこうというのなら、数Ⅲまでの学習が必要になる。
 この記事で紹介されていたのが、京都女子大の系列校に通っていた女子学生の例である。国際教育・英語重視のコースに在籍していたため、数学Ⅱ以降は履修していない。高校に進学しても、微積の基本(3次関数の変化や面積の求め方)や数列・行列、指数関数・対数関数・三角関数を知らずに高校の過程を終えるのである。逆に、理系課程では、多くの場合漢文が教えられないことが多い。源氏物語もどこまで深く学習しているか、不安である。興味深く、そしてびっくりしたのが、数Ⅰの教科書発行部数を100%とすると、数学Ⅱは69%、数学Ⅲはわずか8%だというのである。高校の数学の教師からすると、ほぼ高校の内容は、数Ⅲを勉強するためにあると極論しても、大きく的を外していない。関数分野は直結しているのである。数学Ⅲは、キレイな数学で微積の美しさが学べるのだが、それを知らずに高校を終えるのは、残念である。
 数学の話はさておき、週5日制になってカリキュラムが窮屈になってから、理系文系のカリキュラムの差別化は、より顕著になってきた。STEAM教育などと言われているが、もっとリベラルアーツを標榜することが高校段階には必要ではないか。益々、日本の若者の低学力が深刻になるように思われる。


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