ご存じのように、今シーズンの朝ドラは、植物学者である牧野富太郎をモデルとしたドラマが放送されている。10年近く前から朝ドラファンになって、毎回見ることにしている。知り合いには、「年を取ったね」と言われるが、見ようによってはためになるのである。
さて、ドラマは後半に突入し、万太郎が東京大学に出入りしながら植物図鑑の発刊に向けて、山あり谷ありの展開になっている。その中で、要潤演じる田邊教授が、どうも重要な役どころのようである。彼の名誉心のために、周囲も万太郎も翻弄されるのであるが、田邊教授の姿を見ていると、どうも68・9年に発生した学園紛争に意識が飛んでしまう。言っておくが、実際の田邊教授のモデルになっている矢田部教授がどのような人だったのかは知らないし、私自身も学園紛争を経験していない。私が大学に入ったのは、紛争の10年後である。
さて、田邊教授だが、彼の植物学研究室の唯一の教授であり、海外で植物学を学んできた。そういう彼は、実績を上げるために助教授(准教授ではない。68・9年ごろまではこう呼ばれていた)や講師にたいして、自らの研究テーマであるトガクシソウの研究を強いるのである。教授を頂点として、助教授-講師-大学院生-学生というヒエラルキーが植物学研究室という狭い世界に築かれているのである。すべては、教授の研究の成果のため。部下の成果は、教授の成果。出世するもしないも、教授の意向次第。こんな講座制と言われた大学の体制に、異議を唱えたのが、68・9年の大学紛争なのである。世間では、「日本帝国主義粉砕」など政治的なスローガンを掲げた学生運動が取り上げられ、また中核、革マルだと新左翼の過激な運動や内ゲバが取り上げられるが、この学園紛争、学園闘争と呼びたい運動は、こういう大学の閉鎖的な体質に対する民主化の運動だったのである。この田邊教授の姿を見ると、ついつい学園闘争に思いを馳せてしまう。
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