デジタル教科書有識者会議初会合

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 4月10日に文部科学省でデジタル教科書の導入指針(ガイドライン)の策定に向けた有識者による初会合が開催された。この記事が、4月11日の読売新聞一面に掲載されている。また、「現場に利用を押しつけぬよう」というタイトルで、社説にも掲載された。

 この会議は、「デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議」という長ったらしい名前である。デジタル教科書有識者会議で良いだろう。この会議で文科省の事務方から、10の論点が提起されたという。早速文科省のwebにアクセスして確認した。以下がその内容である。

https://www.mext.go.jp/content/20260410-mxt_kyokasyo01-000048962_4.pdf

 これから国会でデジタル教科書を正式な教科書とするかどうかの法案が審議される。その意味からも、今会議での議論の行方というのは、極めて重要だろう。論点を見てみると、二つのグループに大別できる。
(1)そもそものデジタル教科書の導入に関すること
例えば、
① 教科書として紙だけでなくデジタルな形態も可能となった場合、学校種や学年段階、教科の特性などに照らし、採択権者の意向も踏まえて、教科書の形態のあり方についてどのように考えるか。
② これまでの教科書代替教材の活用実績や実証研究から窺われる、学習への使用における紙・デジタルの特性を踏まえて、紙が効果的な学習場面、デジタルが効果的な学習場面についてどのように考えるか。
③ 認知科学や発達心理学などの知見も踏まえて、児童生徒の発達段階とデジタルな形態を含む新たな教科書の発行・使用との関係をどのように考えるか。
⑤ 授業等でのPC・タブレット等の活用場面が増加することにより、児童生徒が 「 手書き」する場面が減少するとの懸念についてどのように考えるか。
⑦ 諸外国における教科書へのデジタル活用をめぐる動向についてどのように考えるか。

である。これらの論点については、本来中教審のワーキンググループで議論すべき論点であり、正式教科書としてデジタル教科書を格上げするということを決めてから議論すべきことではない。「デジタル有りき」で推進しようとした文科省の大きなミスである。しかし、今の段階でも遅くはないだろう。デジタル教科書の急速な普及に大きくブレーキをかける役目を、この会議には期待したい。実際、初会合でも、デジタル教科書の導入に関して、認知科学や発達段階により、様々な懸念が出された。大いに期待したい。

(2)デジタル教科書を導入するとすれば課題になること
④ デジタルな形態を含む新たな教科書が導入された場合、授業等でのPC・タブレット等の活用場面が増加することが考えられるが、児童生徒が学習目的以外のことに使用したりすることのないよう、次期学習指導要領の検討も踏まえつつ、情報活用能力の育成強化の観点も含め、どのような対応が必要と考えるか。
⑥ デジタルな形態を含む新たな教科書が導入された場合、児童生徒の視力低下など健康への影響をどのように考えるか。
⑧ 次期学習指導要領における基本的方向性として示されている教科書の在り方(内容の精選や教材との役割分担)を実現するために、デジタルな形態を含む新たな教科書の導入に合わせて、教科書の発行者と採択権者双方にどのようなことを示していくか。また、その上でデジタル教材との円滑な連携をどのように確保していくか。
⑨ 教科書の制作・発行、採択、使用において、発行者や採択権者などに過度な負担が生じないよう、どのようなことに留意すべきか。
⑩ デジタルな形態を含む教科書を採択し、円滑に使用していくために学校のICT環境や支援体制に関してどのようなことに留意すべきか。

以上の論点も、もしデジタル教科書を導入するとすれば、壁になったり、懸念されたりする事象だ。これらも解決するために、本来は中教審で議論すべきことなのだ。
 このように考えると、中教審のワーキンググループでの議論は何だったんだということになる。何ら中身のある議論をせずに、デジタル教科書を正式教科書にすることを決めた。本当に意味のない会議である。

 少し話題からそれるが、私は兵庫教育大学附属中学校の校長をしている時から、このデジタル教科書の導入には消極的だったし、どちらかといえば反対であった。というのも、AI研究の新井紀子氏が読解力の欠如を生むと明確に反対表明をしていたからだ。その当時でも、デジタル教科書の導入によって学力が向上するというエビデンスは示されていなかったし、どちらかといえば紙の教科書との明確な違いはない、もしくは学力が下がるという専門家がいたのだ。しかし、大学側はデジタル教科書の導入に積極的だった。
因みにSTEAM教育にも積極的だった。私は、STEAM教育を否定するものではない。私自身も数学教師として、STEAM教育の重要性は認識しているが、あくまでもSTEAM教育は手段であると認識していた。重要なことはより上位の概念である概念教育の推進である。そのために、国際バカロレアの推進を進めたのだ。この概念教育の流れは、次期学習指導要領にも引き継がれているし、すでに世界の本流となっているのだ。
 兵庫教育大学附属中学校のwebを見たところ、令和7年の研究発表には、デジタル教科書のワーキンググループの座長であった堀田 龍也氏が招待されていた。兵庫教育大学は、デジタル化で進むようだが、果たしてそれで子どもたちの学力が向上するのか、附属学校に通わせる保護者も真剣に議論すべきだし、この有識者会議の議論に注目すべきだろう。


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