大阪府立高校入試改革

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 1月20日の大阪府教育委員会で、2028年度以降の府立高校入試の改善方針案が決められた。主な内容は、
①2月20日頃に実施されていた特別選抜と3月10日頃に実施されていた一般選抜を統合し、3月1日頃に行う。
②複数志願制度を新設し、第一志望校と第2志望校に出願できるようになる。
③アドミッションポリシー枠(以下、アドポリ枠)を全校で導入し、最大50%の範囲内で定員を定め、一般枠よりも優先して合否判定を行う。第一志望校でアドポリ枠と一般枠の併願もできる。
というものだ。

 この入試改革の議論が大阪府学校教育審議会で審議されたとき、日程の前倒しが大きな話題になった。つまり、私立高校の入試と時期が近接し、私立高校との生徒獲得競争に影響を及ぼすことだ。私立高校側は、この日程に対して非常に神経質に反発し、大阪府教育庁に抗議をしていた。この点については、以前のブログでも書いた。大阪府の教育方針の一丁目一番地は、「公私における切磋琢磨」である。公立高校と私立高校が互いに切磋琢磨しながら、教育の質を向上させ公私ともに大阪府の教育を向上させていこうというものである。これが大義名分だ。実情は、生徒獲得競争である。ご存じのように大阪府吉村知事は、私立高校の授業料を無償化することで、家庭の経済力に関わらず公立私立を問わず選択できる制度を導入した。その結果、入試日程が早い私立高校に進学する受験生が流れ、府立高校の半数近くで定員割れが発生したのだ。府立高校の危機である。
 私の意見は明確だ。これほど税金を私立高校につぎ込んで、私立高校を半公立高校化するなら、

    「公私ともに同日日程で入試を実施し、公平・公正な土俵で生徒獲得競争を実施する」

というものだ。府立高校は、3年連続定員割れをすれば、再編対象になり廃校の憂き目にあうのだ。今のままでは私立高校だけが守られて公立高校はどんどん減っていく。私立高校にも「退場」していただく学校があっても良いではないか。そうでなければ切磋琢磨は進まない。これだけ、少子化が加速度的に進んでいく状況なのだから、公私ともに同日入試を行うことが必要だというのが、私の持論だ。

 ②の第一志望と第二志望を設けるのも、この府立高校の定員割れ対策だろう。第一志望で定員を満たさない学校で、第二志望の選抜を行うという。今の日程で入試を行った時、果たしてどれだけ府立高校に応募する受験生がいるだろうか。第一、第二志望を設定したが、結局は定員割れをしたという事態になりかねない。同日入試を設定して初めて効果を発揮する第二志望設定である。

 さて、アドポリ枠である。私が校長をしていた時は、志願者の90%から110%の枠で設定されるボーダーゾーンでのアドポリ枠の設定であった。この選抜を行うために受験生が提出した自己申告書をすべて読み、アドポリに「きわめて合致した」生徒を優先的に合格とする制度だった。「極めて合致する」という判断は、校長によってばらつきがあり(これは別に悪いことではない)、私の場合は、アドポリの全て合致しなければ「合」という判断はしなかった。ところが、「合」と判断した生徒がいても、その生徒はすでに定員の90%以内にいる場合があり、ボーダーゾーンで「合」を必ずしも出すとはならなかった。こういうことから、この制度は、実質効力を発揮することは無かったと考えている。

 今回は、一般枠とは別にアドポリ枠を50%まで設定できるので、その効力はかなり大きい。学校がどのような生徒を欲しているのか、そのアドポリに合わせて入試ができるのである。記事には、「ボランティアを重視する学校は、学力検査に加えて作文を課し、意欲を評価する」などの例が示されていたが、教育委員会資料では、

アドミッションポリシー枠(仮称)では、「学科の特性」「探究活動」「地域貢献」「文化的・体育的活動」など、学校の特色に応じた実施区分を設定して募集を行う。選抜資料は、各校において、「面接」「プレゼンテーション」「作文」「実技検査」など学校独自の検査を実施したり、学力検査の特定の教科のみを使用したりするなど、柔軟な方法を採用する。

とある。なかなか面白いではないか。この制度をどのように活用するか、まさに校長の経営能力が問われる制度だ。公立高校は、横並び的な経営が行われる傾向があるが、「尖った学校経営」ができる制度が準備されることになる。大いに期待したいとともに、私が校長であったときにこの制度があれば、面白い経営ができたのにと思ってしまう。


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