授業時間の柔軟化

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 1月17日の読売新聞に学習指導要領の改訂諮問の記事が掲載されていた。紙面の多くを割いているのは、学校の裁量で授業時間を短縮できるという内容だ。現在、小学校では45分、中学校では50分の授業を実施しているが、それぞれ5分短くし、生じた余剰時間を各校が柔軟に使えるようにするということだ。例えば、個別学習を行ったり、探究学習を行ったりすることができる。東京都目黒区立の例も紹介されていた。

 この5分の短縮というのは、とても大きい。授業をしていない者からすると「たかが5分」であるが、教師からすると「されど5分」以上の重みがある5分なのだ。東京都内の公立小学校の校長が次のようにコメントしているのは、当然の事だろう。

「教員は現在の授業時間に合わせた指導方法を確立しており、時間を変更すれば授業内容を考え直さなければならない。各校が積極的に取り入れられるような仕組みを考えてほしい」

 そうすれば、どのような仕組みが必要だろうか?それは、教授内容を「正規授業バージョン」「5分短縮バージョン」に分けることだろう。最低限必要な教授内容は「5分短縮バージョン」とし、発展学習的な内容を「正規授業バージョン」とするのだ。だが、文科省は年間の授業時間を「現在以上に増加させないことを前提」とだけ明記し、「削減」には踏み込まないのだ。そうすれば、どうやってこの5分を圧縮すればよいのだろうか。極めて疑問だ。文科省は、過去の「PISAショック」を怖れているのだろうが、これでは5分短縮に踏み込む学校も「学力低下」を怖れて踏み込まないだろう。

 個別最適化の教育に踏み込むなら、最低限度の教授内容を「5分短縮バージョン」にし、余剰時間を個別最適化の教育、すなわち基礎基本が必要な児童・生徒には基礎的な内容を、発展学習に意欲をもつ児童・生徒には発展学習をというシステムが必要だと思う。今のままの諮問だと、文科省の意図するところも実現しないし、実現しようとすると学校にも混乱が生じるだろう。


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