1月19日の読売新聞の1面及び2面にデジタル教科書に関する記事が掲載されていた。現在、中教審のワーキンググループでデジタル教科書に関する取扱いが議論されているが、21日に開かれるワーキンググループの会議で、
〇デジタル教科書も正式な教科書とする。
〇デジタル教科書か紙の教科書か、どちらを選択するかは教育委員会が決める
ということが提起される。文科省は、どうしてもデジタル教科書を推進したいようだ。前にも書いたようにすでにデジタル教科書に踏み切った海外の国々は、紙の教科書に回帰しているにも関わらず、デジタル教科書を推進しようとしているである。何故回帰しているかと言えば、デジタル教科書を使用しても、紙の教科書を超える学力向上が見られないからだ。それに加え、教科書以外の閲覧など、子どもの学習環境にとってマイナスな要素や教員の新たな負担が増すからである。記事にも東大の教授である酒井氏のコメントが掲載されていた。そのまま引用する。
「デジタル教科書が紙と同等以上であることが示されていない状況で、正式な教科書にするのはあまりにも拙速だ。子どもたちの学力に深刻な影響を与えるおそれがあり、文科省は慎重に検討すべきだ」
と指摘している。
さて、どのように対策を講じればよいだろうか。教育委員会による選択制というところがミソだ。効果がはっきりしないものを現場に丸投げする文科省の姿勢も批判されなければならないが、教育委員会もデジタル教科書の使用に果たして踏み出すことができるだろうか。教育委員会は、市町村レベルで設置されているので、デジタル教科書を選択するとなると、行政単位の学校全ての公立小中学校がデジタル教科書を選択することになる。もし、学力向上どころか、学力の低下という結果になってしまえば、高校入試にも大きな影響をもたらすことになる。教育委員会もなかなか一歩を踏み出すことは難しいだろうと思うが、文科省寄りの教育長がいるところは踏み切るかもしれない。これは余談だが、このデジタル教科書が教育長の政治的立場を鮮明にする「踏み絵」になることは興味深い。
話を元に戻そう。対策の話である。呼び掛けたいのは、全国のコミュニティスクールやPTAで、「紙かデジタルか」の議論を進めてほしいということだ。子どもがどのような教科書で学ぶことになるのかは、親にとっても、地域にとっても重要な関心事である。もし、デジタル教科書を選んで、学力が下がってしまえば、その地域への住民移住も行われないだろう。首長にとっても大きな問題だ。特に、コミュニティスクールは、学校経営に大きく関わることをその任としており、経営に対して提言できる権限、および教育委員会への要望も行える。是非、全国の公立小中学校で、「紙かデジタルか」の議論を始めてほしい。
そして、学校側や教育委員会が「デジタル教科書」を選択するという動きが出れば、「デジタル教科書を選択して、学力が向上するエビデンスを示せ!」と提起してほしい。これが最大の論点なのだ。今、このエビデンスは学術的に示されていない。是非、学校や教育委員会に問題提起してほしい。
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