「定員内不合格」問題

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 12月24日のyahooニュースに、「『友だちと同じ学校に通いたい』 知的障害ある14歳の願い 公立高校入試、空きがあるのに…”定員内不合格” 『将来考えると通わせたい、でも…』母が抱く複雑な思い」というタイトルで、定員内不合格の記事が掲載されていた。記事によると、れいわ新選組の舩後靖彦参院議員が2019年に国会委員会で質疑し、全国的に注目されるようになったということだ。舩後氏は、知的障害のある沖縄県の受験生が定員割れした普通高校を不合格になった実例を挙げ、制度の改善を訴えたという。文科省の調査では、22年度調査で公立高校の定員内不合格は述べ1631人、23年度は2004人だという。まずはこの数にびっくりである。全国で少子化が進行し、定員を満たさない高校が増えたことによるものであろうと思うが、定員内不合格になっているのが、様々な障がいがある生徒たちであることは、想像に難くない。この信濃毎日デジタル新聞の記事も、長野県の知的障がいのある生徒の記事を紹介していた。

 障がいがある生徒が、特別支援学校ではなく公立高校をめざす傾向は強まっている。小学校・中学校でインクルーシブ教育が浸透し、「共に学び共に育つ」という動きが広まっているからだ。私は、西成高校で「知的障がい生徒自立支援コース」の立ち上げ時期を経験した。大きく関わって仕事をしたわけではないが、私が勤務していた時期にこのコースの試験的実施と導入が行われたのだ。初めての事ゆえ、学校も府教育委員会も手探り状態ではなかったかと思う。しかし、私にとっては貴重な体験だった。教頭として赴任した枚岡樟風高校には自立支援コースではなく、高等支援学校と連携する「共生推進教室」が設置されており、この教室の充実にも関わった。自立支援コースと共生推進教室の最大の違いは、高卒資格が得られるかどうかだが、公立高校で大半を過ごしながら、週1回程度職業支援を受ける共生推進教室の利点も大きいと思っている。

 こんな経験を大阪府で現役教員としてしてきた私には、この「定員内不合格」というのが、不可思議だ。記事を読むと、長野県は「入試では能力を総合的に判断しており、障害の有無が合否に影響することはない」と言っているが、「県立高校では原則として定員内不合格を出さないようにしている」と説明するものの、22年度は27人、23年度は22人の定員内不合格が出ているのが実情らしい。建前と実情が大きく違うのだ。更に、入学させるかどうかは「校長判断」だという。確かに、合格した生徒たちを入学式で許可するのは、校長の権限だ。入学式で最初に行われる行事である。だからと言って、障がいがある生徒を入学させるかどうかを校長の判断にゆだねるのは、間違いだ。障がいがある生徒が公立高校で学校生活を遅滞なく送れるようにするためには、「合理的配慮」が必要なのだ。そのためには教育行政の支援が必須である。加配であったり、施設改修であったり、一つの高校ではできないことが求められるのだ。この「合理的配慮」は、教育行政の責任である。

 文科省も「定員内不合格」を調査するだけでなく、その不合格の内実と「合理的配慮」がどこまでなされたのかの実態を調査すべきだろう。大阪府で私が経験したことを考えると、憤懣やるかたない。


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