昨日の続きである。若林の司会、第二弾である。今回の会議は、老舗化粧品会社の40年続くブランド商品のリブランディングに関する会議だ。会議は部長と担当者4人。保守派と改革派が2対2で真っ二つに割れている。半年間会議しても結論が出ていない状況だ。部長はほとほと困り果てて、若林に依頼したという次第だ。若林曰く、「半年間会議して決まっていないものを俺が一回で決着つけるんですか!」とハードルの高さを語る。
改革派の主張は次の通りだ。長年使われていた化粧品も段々と年齢層が高くなり、今では50代・60代・70代・80代が主力になっており、頭打ちだ。化粧品としてのモノは、ずば抜けてよいのだから30代や40代にもアピールできるパッケージにした方が良い。お客様からも「見た目がね・・・」という声もあるという。一方、保守派は、長年使い続けてきたから愛着があるという声もあると言い、替えるとなるとコストがかかる。それが今なのかと思うという、真っ向対立の構図だ。
さて、若林である。若林が偉いと思ったのは、双方の言い分を十分に聞き取るということだ。それだけではない。その相手の主張を自分の言葉で言い換えているということ。こういう風に相手の言い分を聞き取ると、主張した側は自分の意見を理解してくれたと思うのだ。ある意味、カウンセリングの基本である。しかし、これだけでは対立の溝は解消しない。そこで、若林は落としどころを探ろうとする。それが、「リブランディングにはコストがかかる」ということ、つまり、「コストがあまりかからないリブランディングなら良いのではないか」ということだ。ここで若林は提案した改革派の意見を引き取り、相棒の春日の例を出す。
「春日は、いつもピンクのベストを着ているじゃないですか。だけどある時、飽きられるのではないかと、ピンクじゃなくて、黄色とか緑とかのベストを着たんですよ。だけど、お客さんから『?』という反応で・・・」
というと、保守派から「そうでしょう!そうなんですよ。イメージを変えるとだめなんですよ」と、我が意を得たりと猛烈な支持意見。話を最後までできなかった若林は、当惑の沈黙。そこで、改革派の人が、「先ほどの春日さんのピンクの話の続きを聞きません?」と提案して、やっと若林が生き返る。そこで若林が語ったのは、
「ピンクはピンクでも、濃淡を変えたのですよ。この番組では淡いピンク、こちらでは濃いピンクというように。そうすると、イメージブランドは変わらないけど、ファンは変化に気付いてくれるのですね。つまり、マイナーチェンジしてはどうかと思うのです。そうすれば、コストも抑えられますし、コストの許す範囲でマイナーチェンジしてはどうですか」
と。この提案で保守派と改革派の溝が一気に縮まった。つまり、若林の提案は、溝を埋めるために、硬直した議論の視点を変えるということだ。失敗すれば、ドツボに嵌ってしまうだけに勇気のいる提案だが、それを大胆に提案する若林に拍手である。
この番組、NHKがバラエティとして制作したと思うが、プロの芸人の腕を学ぶには良い企画だ。当然、司会が芸人若林であること、そしてテレビカメラが入っていることという設定が会議に及ぼす影響は考慮しなければならない。しかし、会議で話されていることは、オーセンティックな話題で、疎かにできるものではない。ある種、真剣勝負な場なのである。若林の司会術、なかなか面白い。
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