「べらぼう」に期待したい


 12月15日に大河ドラマ「光る君へ」が最終回を迎えた。平均視聴率は、歴代最低2位だったらしい。やはり、大石静氏の脚本がもう一つだったのだろう。道長とまひろが長馴染みであり、恋仲であったという設定には、無理がある。いくら紫式部のパトロンが道長であっても、不倫関係というのは、トレンディドラマ仕立てすぎる。更に、政敵である伊周を追い落とすために、ドロドロ権力闘争を行ったにもかかわらず、柄本佑が演じた道長は淡白すぎるのだ。父親の兼家を演じた段田氏のギラギラした迫力が欲しかったと思う。摂関政治の頂点を極めた道長・頼道親子のドロドロに絡む形で、まひろによる源氏物語の執筆が描かれたら、また違った大河ドラマになったのではないか。

 さて、2025年度の大河ドラマは、「べらぼう」だ。主人公は、蔦屋重三郎である。時代も田沼意次から松平定信の時代だ。意次と言えば、「賄賂政治」の象徴のように扱われてきた。しかし、そうではないのだ。これは、儒教思想に凝り固まり、流通や商業というものを悉く蔑んだ定信の寛政の改革からの視点である。意次と言えば、印旛沼の干拓などの積極財政を行った人物である。その江戸の雰囲気の中で、貸本屋として活躍するのが、蔦屋重三郎だ。今、平凡社新書から発刊されている鈴木俊幸氏著の「蔦屋重三郎」を読んでいる。大河ドラマの予習だ。
 この本を読むまでは、蔦屋重三郎=浮世絵の出版元、謎の絵師、東洲斎写楽を世に出した商人という知識しかなかった。しかし、この本を読んでみると、重三郎は吉原で育っている。そして、吉原を舞台に貸本屋として成長していくのだ。大河ドラマでは、この吉原をどのように描くのか楽しみだ。吉原は、言わずと知れた幕府公認の公設歓楽街である。その一方、文化的サロンの役割も果たしていた。このあたりの吉原の陽と陰をどのように表現するのか、お堅いNHKの腕の見せどころではないかと思う。
 
 寛政の改革を断行する定信に資産の半分を没収されながらも、反権力を貫き通した重三郎に、江戸っ子の「粋」を見たいと思う。


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