佐久間亜紀氏著の「教員不足」(岩波新書)を3日で読んでしまった。とても勉強になるし、興味深い本だ。この本は、現在進行形で進んでいる教員不足について、その実態、原因、解決策を示す良著である。読んでいて、現場感覚にとても近い。文科省は、2021年に各自治体の4月始業式と5月1日時点の教員不足数に関する全国調査を行った。調査対象は、公立の小中学校、高等学校、特別支援学校である。その結果、2021年度の4月の始業式の段階で、2558人が不足(うち小中の不足は2065人)、5月1日の時点でも2065人が不足していたという。4月の2558人は、教員定数全体の0.31%にあたるらしい。これを大きいとみるのか小さいとみるのか。私もこの記事を読んだときに、「これだけ?」という感想を抱いた。この疑問に大胆に切り込んでくれているのが、この本だ。
佐久間氏は、教員不足を
①何を基準にした誰に対しての不足か?
②いつの時点での不足か?
③どの自治体・地域の不足か?
④どの学校種・教科の不足か?
⑤どの雇用形態の不足か?
という5つの視点で実態を分析している。その結果は、私たち学校現場の感覚にとても近いもので、「これぞ教員不足の実態だ!」と思わせるものだ。そして、その教員不足の実態も、小泉政権から始まった「地方分権-三位一体の改革」に遡るとしている。つまり、戦前・戦後と教員の定員は、地域間格差を是正する方向で、教員計画が立てられてきたが、この「三位一体の改革」から教員計画がとん挫し、逆に地域間格差が拡大する方向になっていると指摘するのだ。そのため、制裁的に「教員不足」がもたらされてしまったという。そして、過酷な労働条件のために、若者が教職を忌避し、さらに負のスパイラルに陥っているのだ。その根本が、「失われた30年」であり、教員不足の大きな原因であったのだと、私にとって目からうろこの知見を示してくれている。
また、教員は、「三位一体」の行政改革における地方公務員減らしのほかにも教育改革の対象ともなった。安倍政権が導入した免許更新制度を機に、非正規の教員が大幅に減少し、教員計画の頓挫による正教員の雇用不足を補ってきた非正規雇用の教員の減少を加速度的にもたらしたという。なるほどである。
佐久間研究室は、Ⅹ県の教員不足の実態調査を行っており、そこで見られる教員不足の実態は全国に共通の現象であろう。この本は、現在の教育行政が抱える問題のバイブルである。教員養成大学・学部での教育行政のテキストになって良い本だと思った。現場教員にとっても、自らの置かれている境遇が何によってもたらされたのかを理解するのに、最適の本だと言える。是非読んでほしい。また、教育行政に関わる研究者も読んで、様々な議論を活性化してほしいと思う。
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