読売新聞の「人生案内」をできる限り読むようにしている。世の中の人がどんな内容を相談し、相談員担当のスタッフ(社会的地位のある人たち)がどんな回答を寄せるのか興味がある。それ以上に、教育に関わるものとして、自分の研鑽にも役立つからだ。今回「人生案内」を読んでいると、2日続けて毒親を発見した。5月10日と11日の相談だ。二つとも強烈な毒親だ。10日は毒親本人から、11日は毒親と同居する子どもからである。
10日の毒親は新潟のO子さん。相談内容を要約すると、こんな感じだ。
子どもが高校受験に失敗して気持ちがふさいでいるらしい。ただし、子どもは自分の第一志望ではなく、母親が強く推した学校なので落ちてもさばさば。夫は、もともと無謀な挑戦、落ちて当然という受け止め方だ。O子さんは、自分の子育てが悪かったのではないかと気持ちがふさいでいるらしい。
この相談に対して大日向雅美先生が的確に回答している。「お子さんに幻滅する前に、ご自身の子育て観を変えることが必要です」と。
「高校受験ともなれば、子どもが自分で進路を決めるべきで、悩んだり迷ったりした時に、相談に乗ったり助言したりするのが親の基本的な役割です。」
「親の狭い価値観でお子さんの可能性を狭めてはいけないことを、今回を機に学んでいただけたらと思います」
大日向先生に全面的に賛成である。まったくその通りだ。問題は、今後の事である。このO子さんは、自分の教育観、子育て観が歪んでいるとは到底思っていない。だから、こんな内容の相談を新聞に投稿することができるのだ。この大日向先生の回答で、果たして納得するだろうか。「そうだ、私が間違っていたのだわ!」と思うだろうか。私は思わないと思う。そして、自分の意見に賛同してくれる人を探し続けるだろう。それが毒親だからだ。解決する方法は、二つ。一つは、父親が「お前の考えは間違っている」とはっきりと告げ、「子どもを自分のものと思わず、自立させることを考えろ」と言うこと。そして、もう一つは、子どもが「おかあさん、もう口を出さないで!自分のことは自分で決めるから!」と宣言することだろう。ここまで言われないと、毒親は、自分が毒を吐いていると気づかない。このO子さん、相当深刻な毒親だ。
もう一つは、大阪のD男さん。今度は、被害を受けている側からの相談だ。D男さんは、社会人1年生。しかし、母親は「就職して忙しくなると疲れて寝るだけの生活だから好きなことを諦めろ。くだらないテレビをみるな」と言うらしい。さらに、D男さんが買ったものや通帳の残高を把握したり、D男さんが買ったマンガも「勉強になるもの以外買うな」と勝手に処分するらしい。こんな母親に対して、D男さんは過去のトラウマから反抗できずに黙ることしかできないらしい。
この相談に対して、尾木ママこと尾木直樹先生は、「意を決してあなたが独立することではないでしょうか」と家を出て自立することを勧めている。まったくその通りだ。こんな親の元からは、一刻も早く逃げるべきである。そうでないと母親の支配は益々過激になり、D男さんの人生を支配することになるだろう。結婚相手も自分が気に入った人でないと認めないし、もしかしたら転職しろと言ってくるかもしれない。D男さんの自己決定権をすべて奪いに来るだろう。親との関係は悪くなるだろうが、早く家を出るべきだ。
最後に、なぜ毒親が生まれるかという問題だ。いろいろ原因はあるだろうが、親が子どもを一人の人間として見ていないということが根本にある。子育てをペットを飼うように思っているのだ。動物の子育てでも、時期が来れば親は子を巣立たさせる。そのためにわざと餌を与えなかったりして、自分で餌をとることを学習させるのだ。毒親は、子育てとは子どもを一人前の大人に育てること、自立させることと認識していないことが多い。いつまでも赤ちゃんの時のように「保護」すべき対象と言うことから抜け出せないのだ。だから、毒親になる。
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