ウルトラQの舞台裏


桜井浩子さんの著書『ウルトラQ はじまりの深層』を読んだ。桜井浩子という名前を聞いて「ああ!」と思い当たる人は、かなりのウルトラシリーズ通だろう。彼女は記念すべきシリーズ第1作『ウルトラQ』で、ヒロインの報道カメラマン・江戸川由利子を演じた俳優である。本書は、彼女が由利子役を演じることになった舞台裏や撮影現場の模様を綴った一冊だ。『ウルトラQ』の放送開始から今年でちょうど60年。その節目を記念して刊行されたものである。

『ウルトラQ』と言えば、ガラモン、ペギラ、カネゴン、ケムール人といった強烈な怪獣や宇宙人が登場する特撮ドラマだ。私がちょうど小学校に入るか入らないかの頃に放映されており、テレビの前で食い入るように見ていたのを覚えている。しかし本書を読んで驚いたのは、当初この作品が「アンバランスゾーン(世の中のバランスが崩れた不可思議な世界)」を描くSFサイエンスドラマとして企画されていたという事実だ。なんと、はじめは怪獣の登場すら予定されていなかったという。「ほんまか!」と思わず声を上げてしまった。

路線が変更され怪獣が登場するようになった背景には、放送局であるTBSのプロデューサー陣が制作に深く関わるようになった経緯があるという。詳細はぜひ本書を読んでほしいが、撮影現場には映画出身のスタッフ、特撮専門の技術者、そしてテレビ局の人間が入り乱れ、まさに寄せ集めの混戦状態だったようだ。桜井さん自身も、最初は本格SFドラマだと思っていたのに途中で怪獣番組へと変貌していき、現場の混乱とともに首をかしげていたという。

子ども時代の私が『ウルトラQ』で一番怖かったのは、人間を消滅させる誘拐怪人ケムール人だ。特に強く印象に残っているのはそのラストシーンである。ケムール人が倒された後、彼が残していった液体(水たまり)に足を踏み入れた人が、再び消滅してしまう場面で物語が終わるのだ。なんとも言えない後味の悪さと恐怖が、幼い心に深く刻み込まれた。

結果的に円谷プロが当初目指していた「科学で不可思議に挑むSFドラマ」の構想は、『ウルトラQ』では結実せず、のちの『怪奇大作戦』で昇華されたのではないだろうか。正義のヒーローが活躍する『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』も子ども心に胸が躍ったが、世の中の怪奇現象を科学の力で解決していく『怪奇大作戦』の奥深さもまた、格別な面白さがあった。

桜井さんによれば、現在では海外での「ウルトラ」人気も凄まじいという。特に60代以上の方々が読めば、当時の記憶が一気に蘇る、たまらなく懐かしい一冊である。


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