探究できない文科省官僚

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 3月18日の読売新聞トップに「再考デジタル教育」として、文科省が進めるデジタル教科書への危うさを指摘する記事が掲載された。今回はフィンランドの例だ。ご存じのように、フィンランドは、PISA(国際学習到達度調査)で上位の成績を修めていた。日本からもフィンランドに学ぼうと、教育関係者が「フィンランド詣で」を行っていた。ところが、近年そのフィンランドが、芳しくないのだ。PISAの成績を下落させているのである。この結果に対して、アンデルス・アドレルクロイツ教育相は「教育は、急速なデジタル化に対応できるものではなかった」と述懐している。
 デジタル化を推し進めたフィンランドでは、
「パソコンで見る教科書は、どこを読めばいいかわからない時があった。紙のほうが理解しやすい」という生徒の感想や
「子供の集中力が低下し、短気になるといったことが、その頃、フィンランド全体で問題化した。デジタルに偏った教育への懸念が高まった」という教育行政関係者の声が紹介されている。
(以下のグラフは記事に掲載されているPISA結果)

問題は、記事の最後に指摘されているように、

「デジタル教科書の仕様拡大を前提とした議論の中で、海外の動向を十分検討した様子はうかがえない」

という事実だ。これが最大の問題だ。私も中教審の議論を傍聴したことがあるが、資料に海外の取組状況の紹介はされていたが、なぜデジタル教科書先進国が「紙への回帰」を行っているのか、資料にも書かれていなかったし、議論では一言も触れられなかった。デジタル教科書推進ありきの議論が中教審ー文科省で進められているのだ。

 今の学習指導要領は「探究的学び」を推奨している。探究的学びで重要なことは、「問いを立てること」である。文科省の官僚は、「なぜ、デジタル先進国が紙に回帰するのか?」という問いを立てられないのだろうか。絶好の探究学習だし、自身が探究する時間が無ければ、専門家に依頼をすればいい。こんな役人だから、日本の教育はダメなのではないかと思う。自らが提唱している教育を、自らが実践できていないのだ。

このシリーズ、次回が楽しみだ!


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