小芝風花がいい！

　NHK大河ドラマに花魁役で出演している小芝風花がいい。私が、小芝風花を知ったのは、朝ドラの「朝が来た」で主人公千代の娘役で登場した時だが、「元気でかわいい役者さん」というイメージしかなかった。次にテレビで見たのは、「妖怪シェアハウス」である。このときも、元気でかわいい役者さんで、どちらかと言えばアイドル的な役者さんのイメージだった。「オッ！」と思ったのは、「波よ聞いてくれ」で破天荒なラジオDJの主人公を演じたときだ。マシンガントークで喋りまくる茶髪のヤンキーDJを見事に演じた。今までとはまるで違う小芝風花である。本人もターニングポイントになった作品と挙げているようだ。

　そして、今回の「べらぼう」の花魁、花の井の役である。2回目の今回は、平賀源内に吉原細見の「序」を書いてもらおうと奮闘する蔦重の姿を描いていたが、吉原を案内しても男色の源内はなかなか気乗りがしない。そこに登場したのが、男姿の花魁花の井である。瀬川という歌舞伎役者を亡くした源内にとって、最高のおもてなしは瀬川との時間を少しでも思い出してもらうことと考えた花の井の粋な演出である。この時の、花の井ー小芝風花の目は、まさに花魁の目、こびへつらうでもなく、男にすり寄るでもない、花魁としての女のプライドを芸で魅せようというプロの目。しかしそこにはギラギラしたものはない。男を誘惑のかなたに連れていく底知れぬ妖しさを備えた目なのだ。あの、キャンキャン声でかわいい役をやっていた小芝風花が、こんな演技をするのだと思ったら、役者の幅が広がった、いや、一皮も二皮も剥けた良い役者になったと思う。

　前にも一度書いたと思うが、役者には二つのタイプがある。ひとつは、どんな役でもその人自身を演じる役者である。このグループの代表格は、高倉健であり、今では木村拓哉がそのグループに入る。健さんは、どんな役をやってもやはり高倉健なのだ。もう一つのタイプは、役によってまるで違う人間を演じられる役者である。例えば、最近お亡くなりになった西田敏行さんなどはこのタイプになる。鈴木亮平も役の幅が広い。

　さて、主役の蔦重こと横浜流星だが、この2回目は、花魁花の井ー小芝風花に持っていかれてしまったようだ。今後の蔦重の活躍、というか横浜流星の役作りに期待したい。