兵庫県知事選挙後の議論が白熱している。昨日の様々な番組で、斎藤前知事の当選について議論をされていた。4チャンネルが橋下氏を交えて、かなり自己反省も含めて解説していたので、面白いと思って見ていた。ご存じのように、今回の問題は、兵庫県職員の局長の告発文から端を発している。論点は、次の点だった。
★斎藤知事のおねだり疑惑
★斎藤知事のパワハラ疑惑
★公益通報の取り扱い問題
である。そして百条委員会が設置されることになる。斎藤知事は百条委員会でおねだりもパワハラも否定し、文書の取り扱いについても県の顧問弁護士と相談して、処分して問題ないという回答を得たと証言した。事態は、あれよあれよと進み、百条委員会の結果を待たず、議会は全会一致で不信任案を可決し、斎藤知事は失職、そして今回の選挙へと突入した。
斎藤氏の勝因は何か?マスコミはSNSの拡大を理由に挙げるが、これは違うと思う。SNSに対して、新聞・テレビなどのオールドメディアが敗北したからだと思う。告発文書が出された当初、各メディアは「斎藤知事=パワハラおねだり知事」という構図で、様々な「事実」を報道し、県職員の方が自死したのも斎藤知事のパワハラが原因であると視聴者に受け取られるように報道してきた。しかし、今テレビでは、、
★おねだりもパワハラも無かった
★職員の自死は、個人的なプライバシーの問題
という選挙中にSNSで拡がり、多くの人が事実であると判断した情報を報道している。
オールドメディアの敗北の一つ目は、自分たちが頭の中で構成した「切り取り方」の中に都合の良いピースを当てはめ、ストーリーを構築しようとする姿勢である。当然大手メディアはファクトチェックをしているだろうが、何を取り上げ、何を取り上げないかは、メディアが選択する。だから、自分が構築しようとしたストーリーに当てはまらない事実(ファクトチェックされて、真実だとなった事実でも)は切り捨てるということを行う。これは、報道の姿勢として、前々から疑問を持っていたし、問題だと思っていた。この大手メディアの姿勢が、NHK党の立花氏の異例の立候補により、次々と暴露され、「実は斎藤さんは悪くなかった」「斎藤さんごめんなさい」という動きになったのである。
今更ながら言うのも言い訳がましいのだが、県職員の自死について少し引っかかっていたことがあった。知事のパワハラが原因で自死したのなら、遺族の方のコメントも知事に対する怒りとして出されるだろうと思っていたが、私はそのようなことを目にしなかった。「変だな」と思っていたが、あまりにもマスコミのパワハラ知事扱いが連日続いたので、私も「斎藤知事はおかしい」と思っていた。私も「斎藤さん、ごめんなさい」の部類だ。
もう一つオールドメディアの敗北は、選挙期間中にほとんど選挙の事を取り上げない姿勢だろう。これは、公平性を担保するためであると言われるが、実は大手メディアの自主規制である。有権者が一番知りたい時期にきちんとした報道をしない大手メディアに対して、SNSでバンバン情報が流れ、拡散していくのだ。東京都知事選の石丸現象と同じである。SNSには事実と違う情報も交じっているというの事実だろう。それならば、そのファクトチェックを大手メディアはするべきだ。アクセス回数が多いYouTubeに関して、きちんと大手メディアがメスを入れるべきだろう。今日の読売新聞の社説に「真偽不明の情報が拡散した」という社説が掲載された。拡散したのは、有権者の判断材料を提示しない大手メディ、SNSの内容のファクトチェックしようとしない大手メディの責任だ。読売新聞も、きちんと自分の社会的役割を自覚すべきだろう。責任転嫁をするなと思う。
とはいえ、斎藤知事が県民のための施策を行っていなければ、ここまで支持は拡大しない。斎藤知事の県政の改革姿勢が評価されたがゆえに支持が拡大したわけである。長年の井戸県政の中で、ぬくぬくと既得権益に満足していた様々なステイクホルダーに斎藤知事は切り込んだのだ。SNSは、その支持拡大を短時間に幅広く行う役割を果たしたのだ。以前のブログに私はこのように書いている。(9月27日斎藤氏「出直し選挙」)
選挙の争点は、斎藤氏の県政の評価であろう。第一は、斎藤氏の政策よりも「知事としての資質」が争点化されるであろうが、それだけでよいのかと思う。やはり、争点になるのは、政策でなければならない。出馬を決意したきっかけとなったのが「高校生からの手紙」だったと斎藤氏は言った。県立高校への支援も斎藤知事の政策の一つだろう。さらに、兵庫県立大学の無償化についても目玉政策の一つだ。大学の無償化は、今後の高等教育政策について課題となる問題であり、その先駆けとなるものである。国立大学の学費値上げが話題になる中で、先進的な政策だと思う。
これについて、神戸市長の久元氏は、
「不適切な政策。自分のところの大学だけを考えるのではなく(県内にある)大学全体をどう考えていくのか。(政策を)やめていただきたい」
と強く述べている。この批判はおかしい。県政としては、まずは県立大学を対象とすべきであり、その政策が県民にとって是であるならば、神戸市も同調し、神戸市立の大学も無償化すればよいのだ。それを強い口調で批判する神戸市長の感覚は、理解に苦しむ。
今回の出直し知事選、まだまだ不透明で先行きがわからないが、この半年、斎藤氏の資質がクローズアップされ続けてきた。もう一度原点に戻って、政策の議論、そしてそれを推進することがふさわしい知事の資質を有しているのは誰かという議論をしてほしいと思う。
今、若者を中心に、新聞を読まない、テレビを見ないという人が増えている。そうすると、玉石混交のSNSの意見に流され、支配される危険性が増える。今後、大手メディアは、SNSとどのように関係していくのかを真剣に考えなければならない。また、選挙報道の在り方をきちんと考え直さなければならない。この古くて新しい問題を突きつけたのが、今回の兵庫県知事選挙であったと思う。
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