NHKスペシャル「巨大地震」


 シリーズで放送されているNHKの巨大地震が9月1日「防災の日」に放送された。今回は、どの学者も予期しなかった能登半島地震についての検証だ。観られた方も多いのではないか。能登半島地震発生当初から何回も映像で流れているものがある。7階建てビルが横倒しになったものだ。専門家によると、このビルの窓ガラスがあまり損傷していないことから、ゆっくりと倒壊していったのではないかと推測された。阪神淡路大震災の時のビル群の破損とは、大きな違いだ。阪神淡路大震災の場合は、ビルが倒壊するというよりは、窓ガラスが大きく破損する、上の階が下の階を押しつぶすというような映像が多く見られた。
 専門家のシミュレーションによると、この能登の倒壊したビルは、まずは基礎部分の杭が破損し、そこからゆっくりと横倒しになったという。なぜ、杭が最初に破損したのか。それは、このビルが建つ土地が軟弱地盤だからだ。そのため、固い地盤よりも大きく揺れるのだ。同じく軟弱地盤に立つ市営住宅は、杭部分が破損し、1.5mも横にずれていた。恐ろしい現象である。
 ここからがより恐ろしい予測だ。現在大都市と言われている東京・名古屋・大阪などは、どんどん軟弱地盤に拡大し、都市を形成しているのである。下の地図は、大阪市で地震が発生した場合の液状化の発生度合いを示したものである。

 大阪城が建つ上町台地以西は、ほぼ液状化が発生すると考えてよい。それもそのはずで、梅田も難波も元々は海の底だったのだから。長年、淀川と旧大和川が運んできた土砂が堆積してできた平野なのだ。そのこと示すのが、下の図だ。

 大阪城から北に歩くと天満橋がある。大阪に住んでいる人でもあまり知らないが、天満橋に行き着くまでに、「大阪市にこんな坂があるのか」と思えるほどの坂を下るのだ。それが上町台地の北端である。大阪城は上町台地の強固な地盤の上に立っているのだ。大阪城の前は、蓮如の大阪本願寺が建っていた。よく考えられていると改めて思う。
 このように考えると、能登半島地震を上回るマグニチュード8クラスの南海トラフ地震が発生した時、梅田や難波に林立するビルが土台ごと崩壊する危険性が高い。津波が襲ってきて、地盤の低い梅田や難波は壊滅的な被害を受けるために、垂直非難を想定されているが、その非難すべきビルが倒壊・横倒しになっている可能性があるのだ。被害想定をもう一度やり直す必要性があると専門家は言う。
 今、私が勤めている場所は、難波である。海抜2m~3mの地点にある。地上9階建てのノッポなビルだ。今までは津波到来の心配で、どこに非難するかということを考えていたが、これからは、職場のビルや近隣のビルが倒壊することを想定しなければならない。「とにかく、上町台地をめざして、東に避難しよう」と考えていたことが、間違っていないことが改めて認識できた。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP