NHKの報道、指導死について


 7月4日の朝のNHKのニュースで指導死の問題が取り上げられていた。学校または教員による不適切な指導により、生徒が自ら命を絶ってしまうケースが、少なからずあるという指摘である。詳しくは、以下のURLを見てほしい。
“指導死” 教師の指導の後に子どもが自殺…背景に何が? – #学校教育を考える – NHK みんなでプラス

 この報道に登場された遺族である父親の方のコメント、「先生たち、指導したことでまさか死ぬと思って指導している先生は、誰1人いないと思うんです。ただ、そういうことが実際にある。子どもを思って指導してくれているとは思うんですが、子どものための指導は紙一重だということを知っていただきたいです。」という言葉は、あまりにも痛々しく、私たち学校現場に立つ者は、絶対忘れてはならないことである。
 私の経験を話そう。10年近く前に大阪府立の高校で生徒が教師からの事情を聴かれて帰宅途中に電車に身を投げるという事件があった。問題事象に関して事情を聴いていたようだ。この遺族の父親が言ってくれているように、「指導したことでまさか死ぬ」とはどの教師も思っていなかったのである。この事件が起こってから、私は問題事象への対処の方針を変更した。
 まずは、以前の対処はどうだったか。問題事象が発生すると事実の確認を行い、そこから帰宅させていた。必ず帰宅したら学校に連絡をすることは義務つけていたが、1人で帰宅させ、保護者が家に帰るまで一人で在宅することもあった。これが私が教員になった時から行われていた問題事象への初期対応であった。この事件が発生してから、生徒を一人にしておくことを極力避けた。事実確認が終了してから(もしくは、事実確認が長引けば、その途中でも)保護者に連絡を入れて、学校で直接保護者に引き渡すことにした。
 義務教育と違い、高校では停学指導が行われる。喫煙やカンニングなども必ず停学になる学校がほとんどだろう。私立高校だと退学にまで結びつく場合もある。中学校を卒業した間近の高校1年生にとって、教員からの指導で終わっていた中学時代と違い、「停学」になるということのショックは相当なものだ。高校教員にとっては、日常的な風景でもである。確かに以前は、喫煙やカンニングの指導で自らの命を絶つような生徒は、皆無と言って良かったように思う。しかし、子どもたちの状況はどんどん変化している。「撃たれ弱い」と言ってしまえばそうなのだろうが、そんな言葉では表現できないほど、心が壊れやすくなっている。この点に私たちは、もっと注意を向けるべきだろう。
 NHKの報道でも取り上げられていたように、

・大声で怒鳴る、ものを叩く・投げる等の威圧的、感情的な言動で指導する
・児童生徒の言い分を聞かず、事実確認が不十分なまま思い込みで指導する
・組織的な対応を全く考慮せず、独断で指導する
・殊更に児童生徒の面前で叱責するなど、児童生徒の尊厳やプライバシーを 損なうような指導を行う
・児童生徒が著しく不安感や圧迫感を感じる場所で指導する
・他の児童生徒に連帯責任を負わせることで、本人に必要以上の負担感や罪悪感を与える指導を行う
・指導後に教室に一人にする、一人で帰らせる、保護者に連絡しないなど、適切なフォローを行わない

などの不適切な指導は避けなければならない。経験が浅い教員にはよく起こりがちなことであり、校長室で報告を聞いていて、細かい点まで教員に指示をすることもあった。指導死、こんなことは絶対あってはならないし、無くさなけばならない。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP