8月16日、17日と二夜連続でNHKが総力戦研究所のドラマとドキュメンタリーを放送した。とても興味深く観た。詳しくは、NHK+でも見ることができるので、そちらを見てほしいのだが、要は日米開戦の是非について、当時の日本の優秀な頭脳たちが、軍事だけではなく、経済、思想、外交などあらゆる面をシミュレーションした史実に基づいたドラマだ。この研究の結果、日本はアメリカに必敗するという結論に至った。それだけではない。この戦争で日本は国の体をなさないまでに崩壊するという結論に至ったのだ。
時の内閣の前に報告する若い頭脳たちは、勇気が要っただろう。しかし、この報告が活かされることは無かった。12月8日、日本は英米に宣戦布告をするのだから。そして、事態は、このシミュレーションのとおりに進み、310万人という戦死者、そしてその遺族、本土空襲で死傷者を出して敗戦する。この研究で予期できなかったのは、ヒロシマ・ナガサキへの原爆投下だけだという。なぜ、この研究が活かされなかったのか。ドラマの中でもいくつかその要因が示されていた。列挙すると、
★日中戦争の泥沼化による多大な犠牲。本来なら撤退も考えられるが、撤退すれば戦争で亡くなった兵士は犬死ではないかという日本陸軍の考え
★すでに多額の国家予算をつぎ込み、対米英戦に向けて軍艦建造にまい進する海軍の考え
★対日強硬政策のアメリカに対し戦争やむなしを煽るマスコミ
★そして、対米強硬に向かう国民意識
である。ドラマでは天皇陛下は対米英戦争の回避を東条に示した。東条は、首相として戦争回避に向けて動こうとするが、国民から非難を浴びる。そういう内容が描かれていた。東条でさえ、対英米戦を回避しようとしたのか・・・と自分の知らないことが描かれていたので、勉強になった。
それにしても日露戦争でロシアに勝ったということが、これほど日本国民、軍だけではなく、日本国民全体に慢心を産んでいたのかと思うと空恐ろしい。現在でも進み始めたプロジェクトを撤退することの難しさを示す例は嫌というほどある。傷が浅いうちに撤退することは、本当に難しい。
ところで、以下は余談だ。今回の主役は、池松壮亮であり、仲野太賀である。来年の大河ドラマ「豊臣兄弟」の秀吉と秀長のコンビだった。面白いな、なぜこの組み合わせ?と思ってみていた。更に、「虎に翼」の寅子の旦那星航一のモデルの三淵 乾太郎もこの総力戦研究所の1期生だったことを思い出した。新潟で彼が心の中の深い傷を寅子に打ち明けるシーンを覚えている。そのとき、私ははじめてこの「総力戦研究所」の存在を知った。
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