働き方改革‐クローズアップ現代+


 宝塚の自死問題を受けて、11月15日のNHKクローズアップ現代+では、働き方改革の問題が取り上げられていた。長時間労働により、同僚を失ってしまった後悔を、2人の記者が語っていた。関係した当事者たちが、自分の言葉で同僚の死を語ることはつらいと思うが、それだけNHKの「二度とこのようなことは起こさない」という決意が伝わる。
 働き方改革のきっかけになったのが、2015年の電通社員の自死事件である。それから10年近く、長時間労働に関する法律も整備され、徐々に長時間勤務は減少している。ところがである。番組で取り上げられていたのは、精神疾患の増加である。その原因は、ジタハラ問題と言えよう。ある程度予想していたが、このジタハラ問題に切り込まないと真の働き方改革とは言えない。
 番組では、時間外勤務を減らすことを上司から命じられ、勤務時間内は「時間、時間」と追い込まれた社員のインタビューが報じられていた。時間外勤務はを減らすことを求められるのに、業務量は変わらないのだ。これでは、ストレスが溜まるのは当たり前である。挙句の果てに、「なぜ時間外労働が減らないのだ。そんな奴は要らない」と人格否定されては、精神疾患を患うのは当然だろう。もう一つの例は、中間管理職の場合であった。部下に時間外労働を命じられない分、自分で仕事を背負いこんでしまった。仕事をしてもしても、終わりが見えないことから自ら命を絶ってしまった。本当に痛ましい。

 前の職場でも労働基準監督署からの是正勧告を受けて、時間外労働の縮減が命じられた。学校の場合、どこまでが教師の仕事の範囲なのか、あいまいな部分は多々ある。生徒が学校にいる限り、生徒を第一に考えて仕事をする。授業はもちろんのことだが、生徒が相談に来れば、自分の仕事を横に置いて対応する。保護者から電話があれば、保護者対応を優先する。気になる生徒がいれば、休み時間も見守りをする。とにかく、生徒が学校にいる間は、生徒ファーストなのである。生徒が下校して初めて自分の仕事ができるが、生徒の下校時間=勤務時間の終了だ。「時間外労働を減らせ」と言われれば、授業の準備時間を減らす、生徒対応の時間を減らす、保護者対応の時間を減らすということになり、それは学校から提供する教育の質を低下させることを意味する。唯一、制度的に業務を減らすことができるのが、部活動であった。私は、ジタハラにならないように、部活動指導員の配置を強く求めた。それなりに成果があったように思うが、学長から「校長不適格」と言われ、職を自ら辞した。今でも、自分の主張したことは、間違っていないと考えている。

 業務を減らして、はじめて真の働き方改革はできる。時間外勤務の時間だけを指標に働き方改革を進めても、その職場は仕事の質が低下するか、職員の精神疾患が増すだけだ。


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