10月26日に河合塾主催の「学校と社会をつなぐ調査最終報告 書籍発刊記念講演会」がオンラインで開催された。講演者は、この調査の中心である溝上慎一教授(桐蔭学園理事長)、経済産業省の五十棲浩二氏、長野県教育長の内堀繁利氏である。溝上氏の講演内容は、学校と社会をつなぐ10年間のトランジション調査の結果で、一度聞いている内容である。簡単に言うと、高校2年生での資質・能力は、大学に入学してからも大化けしないということだ。各人は成長は続けていくが、資質・能力の高・中・低のグループ間移行はほとんど起こらないということである。そうすれば、生徒の成長過程で大化けするのはいつだろうかという大きな疑問がわく。詳しいデータを提示はできないが、私が高校生を対象に行った「学び未来PASS」の結果では、明らかにどのタイプの資質・能力を持っているのかというのがはっきり出ていた。一方、附属中学校で行った「学び未来PASSジュニア」の調査では、どのタイプの資質・能力を持っているのかという萌芽が見え始めているが、高校生ほど明確に分かれているわけではないことが分かった。ということは、10代の若者の成長過程で、若者が大化けしていくのは10代の前半ではないかと仮説が立てられる。このトランジション調査は、高校2年生からの調査なので、それ以前からの調査があれば良いと思う。
さて、長野県教育長の内堀氏の話である。長野県の教育振興計画について紹介された。氏の説明では、探究学習であるとか、OECD2030がめざすagency、well-beingなどの言葉が飛び出し、「この教育長さん、本当によく勉強されているな・・・」と思った。自分の自治体の教育振興計画を自分の言葉で語ることができるというのは、当たり前と言えば当たり前である。ところが、私が長年勤めた大阪府教育委員会の教育長は、行政マンが長年勤めるのが慣例となっている。だから、校長会でも最初に挨拶して退席するということしか目にしていない。大阪府では、教員系の教育委員会トップとして教育監というのが設けられている。教育政策についてはこの教育監が中心になって政策を語ることになっている。それなら、教育長の役割は?単なる名誉職?と思ってしまう。
3人の講演が終わり、シンポジウムが開催された。そこでも内堀教育長の発言は、的を得たものだった。
「これからの教育は探究学習が重要であること、それを制約しているのが、二つ。それは、学習指導要領で決められている各教科・科目の最低単位数と大学入試である。これがあるために、高校でのカリキュラムがとても窮屈になり、探究学習を行おうとしても十分な時間が取ることができない。例えば、大学入学共通テストなども1点刻みで争うようなことを廃止し、大学入学への資格試験とすれば、高校での学習で何を履修習得させればよいかが明確になってくる。」
という指摘である。まさに主体的・対話的で深い学びを200年以上続けているフランスバカロレアの制度と同じ発想である。本当によく勉強されていると思った。やはり、教育長はこうでなければならないだろう。
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