いじめ兆候 政府の対策は有効か?

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 本日10月12日の読売新聞に、「いじめ兆候 早期発見へ 政府の緊急対策前倒し」というタイトルで記事が掲載された。内容を読んでみると、
①学習用端末やアプリで子どもの心身の変化の把握支援
②スクールカウンセラー配置校の増加
③学習支援の場の充実
となっている。②・③はいじめが発生してからの対策としては、重要であろう。いじめを深刻化させない、不登校状態にさせないという意味では、意味のある対策と思われる。その一方、①の対策はどうだろう。効果はあるのだろうか。いじめに遭っている児童・生徒は、自分がいじめの対象になっていることをひたすら隠そうとする。当たり前だろう。自分がいじめに遭っているとなれば、自己肯定感が極度に落ちるからであり、そのような状況になっていることを自分も認めたくないし、教師にも親にも知られたくないのだ。このような心理状態にあるときに、学習端末やアプリで正直に答えるだろうか。最初は答えるかもしれない。そして、答えた児童・生徒が教師に呼ばれて、「どうしたの?いじめに遭っているの?」と聞かれたとたん、児童・生徒の間には「なんか、あのアプリに『調子悪い』みたいな回答したら、先生に呼ばれるよ」「いじめに遭っていないかと聞かれるよ」という話が、一瞬に広がる。果たして、効果はどこまであるのだろう。効果はゼロではないし、マイナスとまでは言わない。しかし、こんなことを考える人は、学校現場を知らない人なのだろう。有効な対策とは言えない。

 いじめの早期発見の対策の有効打は何だろう。それは、教師の「目や耳」を増やすことだ。授業中はもちろん、休み時間などの児童・生徒の微妙な人間関係に気づく「目や耳」を増やすことである。中堅以上の教師になってくると、日頃の学校の風景となにか違うという「違和感」に気づく。いつも同じ5人でいるグループに今日は4人しかいない、一緒にいてふざけあっているけど、あの笑い方はいやな気持ちを隠した笑いだ、この冗談は、いじりを超えていじめになっている等。いつもの学校風景に違和感を感じるのである。そこには児童・生徒の微妙な人間関係の変化があり、それがいじめに発展する芽なのである。「目と耳」を増やす。これが一番効果が高いと思われる。要は、学校の教員の人数を増やすということだ。

 教員を志望する若者が激減するほど、学校現場がブラックである。こんな状況で、いじめなんてなくならない。アプリを考える時間があるなら、文科省は財務省と交渉として教員増の予算を取ってくることが、本来やるべき仕事だろう。


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