これは面白い取り組みだー「SNS中傷 中学生の考えは」


 10月1日の読売新聞の「社会部⇔あなた 言わせて 聞かせて」におもしろ記事が載っていた。詳しくは、下記の記事を読んでほしい。

読売新聞 「SNS中傷 中学生の考えは」

内容は、音楽イベントで観客に体を触られ、被害を訴えた韓国の人気DJ「SODA」さんに関する中傷問題を取り上げた記事を、国語の授業に取り入れた実践の紹介である。実践されたのは、広島県福山市立松永中学校の池原正敏先生だ。記事では、「どの生徒も、被害者を責める行為は間違いだとの立場で共通でしたが、関心を寄せたポイントは少しずつ違います。」とその内容を紹介していた。
 池原先生の素晴らしいところは、記事を紹介して、「さぁ、君たちはどう思う」と作文を書かせることに終わっていないことだ。この「SODA」さん問題で、クラス内で討論をしている点である。記事ではわかないから何とも言えないが、池原先生は、

個人で自分の意見を作文する
→グループで討論する
→グループで討論したことをクラスで発表し意見交換・共有する
→今までの討論を踏まえてもう一度自分の意見をまとめる

という流れで授業をされたのではないかと思う。この流れこそが「主体的・対話的で深い学び」、いわゆるアクティブラーニングの神髄である。最初に個人で考えないで、「さぁ、話し合おう」とすると、自分の考えを持たずに、またはまとまらずに話をするので、相手の意見を鵜呑みにする、または自分の意見と勘違いしてしまうことが起こる。自分の頭を働かせずに、「そういう意見でいいよね」と納得してしまうのだ。これを「フリーライダー」という。しかし、最初に自分の考えをきちんと考えさせてからグループの討論に移ると、相手の考えとの共通点や相違点が明らかになり、自分の考えに「揺れ」が生じる。この「揺れ」が大事である。「揺れ」るからこそ、また自分で考え始めるのだ。「自分は、こう思ったけど、そんな見方もあるんだ。それなら、この問題、どう考えたらいいのだ?」というように。そして、更にグループの考えをクラスで共有することにより、更に「揺れ幅」は大きくなり、思考の幅も深さも進化・深化するのだ。そして、最初に考えた自分の意見にたいして、様々な周囲の考えを考慮したうえで、「だから、私はこう考える」と自分の意見を深めていくことができる。記事に紹介された「嫉妬」は、まさにそのような過程で生まれてきたのではないかと想像する。まさに「主体的・対話的で深い学び」である。

 残念なのは、今回の担当記者である森安徹氏には、こういった教育的視点は一切なく、記事にされていなかったことである。まあ、今までの担当が警察取材を長くされて教育畑ではないの仕方ないが。それでも、教育担当の記者に、「この池原先生の実践って、どう評価するの?」と聞けば、また違った内容の記事になっていただろうに。記者も縦割りの自分の問題意識だけで、記事を書くのではなく、違うテリトリーとの意見交換を行い、自分の考えに「揺れ」を生じさせてはどうか。まさに大人にも「主体的・対話的で・深い学び」が必要とされているのだ。


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