関東大震災の教訓

,

 本日9月1日は、ちょうど100年前に関東大震災が発生した日である。現在では、「防災の日」として全国的に防災訓練などが実施されている。昨今の地震災害が頻発していることもあり、防災の教訓は認識されているのではないか。特に南海トラフに関する大地震の発生が現実味を帯びている中で、防災に関する意識は高まりつつあるし、さらに高めなければならない。
 私がここで述べたい教訓は、関東大震災が発生した時に起きた朝鮮人に対する虐殺行為である。未だに、何人の朝鮮人が殺され、傷つけられたか判明していない。それほど、民衆が暴徒化し朝鮮人に暴力を振るったのであろう。8月30日のクローズアップ現代+でこの虐殺が取り上げられていた。衝撃的だったのは、震災を教訓化するために学校で書いた子どもの作文に、この「朝鮮人の虐殺」が生々しく書かれている点である。虐殺の状況が凄まじいものであったことが子どもの目を通して伝わってきた。
 この虐殺がなぜ起こったか?「朝鮮人が井戸に毒を投げ入れた」「朝鮮人が襲ってくる」などのデマが流れたことが発端と言われているが、それが凄まじい虐殺にまで発展する土壌には、日本人の朝鮮人への差別があったためである。差別という簡単な2文字で表現したが、日本人の朝鮮人に対する差別は凄まじいものであったのだろう。この震災を機に、朝鮮人が復讐してくるということを想起されるほどの関係が、日本人と朝鮮人との間にあったのだ。日本人が日常的に行っている朝鮮人への行為は、「恨みを買っても仕方ない」程のものであると日本人自身が自覚していたのである。だから、このような流言飛語を安易に受け入れることになってしまったのである。

 現在はどうだろう。日常的にもSNSでデマが流されている。それもより「リアル」にである。画像生成AIで作成した本物と見間違える画像を添付して流布できる。非常に危険な状況であることを私たちは認識すべきだ。震災などのパニックに陥る状況になれば、より正確な情報が必要になる。情報を取得するにあたり、その情報の根拠は何なのか、誰が言っているのか、しっかりと見極める力が必要になる。
 今、日本には東南アジアを中心に多くの外国人労働者が働いている。最近こそあまり報道されないが、過酷な労働条件に追い込んで、外国人労働者から搾取と収奪をする労働現場があった。100年前と同じような構造が、今の日本にもある。果たして、同じような事件は起こらないと言えるのか。
 都会を中心に、コンビニに勤める外国人が本当に増えた。私が定期的に利用していたコンビニでもベトナムからの実習生がアルバイトをしていた。どの外国人の店員にも共通しているのだが、彼らは不安そうな表情を浮かべている。当然だろう。言語も十分ではないにもかかわらず、マニュアルだけ教えられて店頭に立っているのだ。相手がマニュアル以外のことを言ってきたらどう対応したら良いのか。不安でたまらないだろう。案の定、私が定期的に通っていたコンビニの若いベトナム人の店員も不安そうな顔をしていた。外国人の店員を見かけたら、私はできる限り声をかけるようにしている。「日本語上手ですね」「頑張っていますね」と。その店員さんにも同じように声をかけた。そうすると、その不安な表情がすっと消えて、笑顔が浮かんだ。「ありがとうございます」と本当に可愛い表情で答えてくれる。
「アルバイト?」
「そうです」
「仕事は何をしているの?」
「まだ日本語学校に行っています」
「そうなの。頑張ってね」
「ありがとうございます」
こんな会話をして店を去った。その後も彼女を見かけるたびに簡単な会話をした。少しでも日本で働く不安な気持ちを解消できたらと思った。
 コンビニでは、いろいろなものが機械化され、そして対応もマニュアル化されていて、人もマニュアルの一部と思ってしまう。しかし、そこにはちゃんと「人」がいるということをもっと私たちは認識すべきだろう。特に、日本で働く外国人には、「異国で働く不安」を解消してもらうために、「日本人は優しい」「親切だ」と感じてもらうことが必要だ。こういう日常的なつながりが、流言飛語を拒否し、否定するのではないかと思う。学校でもこの「防災の日」に、この教訓をしっかりと伝えなければならない。


“関東大震災の教訓” への1件のコメント

  1. NORIMI FUjIMOTOのアバター
    NORIMI FUjIMOTO

    あるテレビ番組によれば、なぜ9月1日が防災の日なのか、何が起こったからなのか、今、日本では、およそ2人に1人が知らないらしい。もっと言えば、30代の人は、60パーセント以上の人が知らないらしい。こんなに大切なことなのに、これが現実である。やはり、教育現場できちんと教えるべきこととして教えていかなければならないであろう。でも、教える先生もしっかり教えられる内容を学習しているのか、そもそも知っているのか、そこが疑問であり心配でもある。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP