持続可能な水産業に向け、経産省はリーダーシップを発揮しよう!

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 福島原発の処理水の放出を巡って、中国が日本産の水産物を全面的に輸入禁止にした。もはや、中国には科学がない、科学者もいないと言っても差し支えない。また、中国では一部の日本人の処理水放出反対のSNS投稿を何度もリツイートし、「日本人も反対している」という官製キャンペーンを展開している。また、一部の中国人と思いたいが、中国から日本の色んな機関に今回の放出に対して、抗議の電話が殺到している。つい昨日、私が勤める学校にも電話が掛かってきた。どうも、AIを使って自動音声で日本の電話番号に無作為にかけているようだ。中国政府と中国国民のこの問題についての対応は、度を越している。中国政府は、どうも国内の不景気を国外に国民の目を向けさせているのかもしれない。この件について、少し意見を述べてみたい。

 まず、感情的には、中国が日本の水産物を輸入禁止にするなら、中国からの団体旅行の受け入れを拒否してはどうかと思う。これぐらいの対抗措置をやって初めて、外交の相互主義のバランスが取れるのではないか。「中国が、水産物を輸入しないのなら、日本に団体で旅行に来るな!」ということである。京都をはじめとする有名な観光地は、オーバーツーリズムの問題で悲鳴を上げている。特に中国人のマナーが悪いと聞く。それなら、観光業界には申し訳ないが、日本政府が先頭を切って「水産物を輸入しないなら、日本に来てもらわなくて結構!」と見栄を切ってもいいのではないかと思ってしまう。これが、国際関係での喧嘩の仕方ではないか。
 ところが、「感情的には」と言ったように、この対応策はあまりよくない。それはなぜか。中国と日本の国力の差が歴然としているからだ。日本のGDPは、中国のそれに遠く及ばない。チキンレースをやってしまえば、先に音を上げるのは日本なのだ。さすれば、今の日本政府のように、ひたすら「抗議と理解とお願い」を繰り返すしかないのか。それも情けない話である。そこで素人ながら少し考えた。

 以前、私が尊敬するエマニュエル・トッド氏は、「中国の脅威は、それほど恐れる必要はない」と言った。なぜなら、「一人っ子政策」のつけで、やがて中国の成長は鈍化し、アメリカを脅かすほどには、そして世界で覇権を握るまでには成長しないからである。氏の予想が、早くも当たってきた感がある。中国の成長の推進力であった不動産業界が不況や倒産に陥っているし、大学を卒業しても就職先が見つからないと「死んだふり写真」を投稿する大学生が急増している。どれだけの失業率か、とうとう中国は若者の失業率の公表を取りやめたくらいである。中国は、自国に都合が悪くなると、すぐに客観的データを改ざんしたり、公表することを止める。ゼロコロナからウィズコロナに急激に転換した時も死者数は相当数になったはずだが、中国政府の発表した数は、現実と大きく乖離した。言いたいことは、今後中国の経済は、落ち込んでいく可能性が大きいということである。それなら、そんな中国とこの際、手を切っていくことも考えられる。今回の中国の措置を良い機会ととらえて、他国への輸出に切り替えれば良い。政府は、800億円の補償金を用意しているというが、この金を使って、持続可能性が高い水産業に転換を図るべきだろう。
 例えば、こんなことが考えられる。私も初めて知ったのだが、ホタテは殻ごと中国に輸出され、中国で加工され、その多くはアメリカに輸出されている。それなら、少々コストが掛かるが、国内でホタテ工場を建設し、日本から直接海外に輸出すればよい。人手が足りないなら、それこそ東南アジアから技能実習生に来てもらい、働いてもらうのも手だ。彼らに日本の技術の高さを学んでもらい、自国の発展に寄与してもらえばよいのではないか。これまで、中国が中心になっていた水産物の貿易相手国も、インドをはじめとする中国・ロシア以外のグローバルサウスの国々に広げていけばよい。やがて、国力が落ちていくことが見えている中国よりも、これからどんどん成長していくであろうインドなどを相手に商売をする方が、余程持続可能性が高い。この政策転換には、自らの「血を流す」ことが必要になるので、民間企業に任せていては、中々方針転換ができないだろう。ここは、担当省庁である経産省が中心になって、政府がリーダーシップを発揮して、持続可能性のある水産業に構造転換させなければならない。岸田政権にその力があるか、政権の力量が試されている。そして、各党は、この問題で何を語るか、それこそ、政権を担える党がどこかがはっきりわかる。
 しかし、こんな素人にも思いつくようなことを、どの専門家も政治家もマスコミも言わない。やはり素人考えなのだろうか。


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