日本版DBSを「ざる」制度にするな!


 子ども家庭庁で日本版DBSの創設に向けて議論が重ねられている。子ども家庭庁のwebpageを見ると、今まで4回議論が重ねられている。DBSとは、「Disclosure and Barring Service=前歴開示および前歴者就業制限機構」のことである。今回議論されているのは、子どもを性犯罪から守るために、性犯罪の前歴者を登録・開示し、子どもと接する職場に性犯罪の前歴者がいないことを示すシステムである。第4回で議論されているのは、対象施設をどうするかである。学校や保育所などの行政が設置した施設は対象になるのはもちろんだが、塾やスポーツ施設は任意の「手上げ方式」になりそうだというのである。塾などでも性被害に遭った例は、発生しているわけであるから、このような民間施設でも当然義務化が求められる。
 抜け穴は、それだけではない。そもそも対象となる性犯罪には、不同意性交や撮影罪などの刑法の対象になる犯罪のみで、条例違反や示談により不起訴になった場合は、対象外となる可能性がある。各都道府県などの自治体には、青少年保護条例などにより、18歳未満の青少年との性交を禁じている条例が制定されている。ところが、この条例は都道府県ごとに微妙に名称や内容に違いがあるので、性犯罪の前歴があるにも関わらず、対象にならない可能性がある。痴漢やわいせつ行為は、繰り返し行われる犯罪と言われており、このような常習犯が子どもとかかわる現場で働くことは、絶対に排除しなければならない。
 示談で不起訴になった場合も、DBSに掲載されない可能性がある。性犯罪を犯し、罪に問われたにも関わらず、示談で不起訴になった経験を加害者はどう受け止めるだろう。ある種の「成功体験」と受け止めることが危惧される。このような場合、再犯する可能性が極めて高い。また、示談に応じた被害者側も、様々な事情があるとは言え、世の中に性犯罪者を放逐してしまったことには変わりない。子どものいる現場で、また同じことが繰り返される可能性は否定できないのである。もし、示談に応じてしまったために加害者が同じ犯罪を繰り返したら、被害者は良心の呵責に耐えられるだろうか。
 この制度が進んでいるイギリスでは、警察や自治体から通報された者もDBSリストに掲載される。子どもを性犯罪から守るために、できる限り穴を小さくしている。この秋の臨時国会に制度案が提出されるらしいが、「ザル」法案では意味がない。今後の子ども家庭庁の議論に期待したい。


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