2025年度の公立学校教員の採用倍率が、前年度比0.3ポイント減の2.9倍となり、過去最低を更新したと報道があった。▽小学校が2.0倍(前年度比0.2ポイント減)▽中学校3.6倍(同0.4ポイント減)▽高校3.8倍(同0.6ポイント減)▽特別支援学校2.0倍(同0.2ポイント減)だという。ある程度の教員の質を確保するには、競走倍率が3倍必要と言われているが、小学校は2.0倍とは、危機的状況ではないだろうか。(以下は、毎日新聞作成のグラフ)

中教審の特別部会の名称は、「質の高い教師の確保特別部会」ではなかったか。ここで議論され答申された結果、教職調整手当の暫時UPや、主務教諭の導入、働き方改革推進の教育委員会の責任などが明記されたが、このアナウンス効果はほぼ皆無だったという事になる。一体、何を目的とした議論だったのだろうと思う。全然「質の高い教師の確保」に寄与していない。
そもそも、学校現場=ブラックという認識は、社会に浸透している。このブラック化を解消する手立てを改善しなければ、教員志望者は増えないというのは、誰が考えてもわかることだ。そのことを理解しない監督官庁である文部科学省とは、一体どういう思考回路をしているのかと思う。
ブラック化を解消するには、文科省が勝手に決めた「時間外在校等時間」という概念を止め、きちんと労基法に基づく「残業時間」と改めることである。ただし、現行のままで教員に残業手当を支給すれば、9000億~1兆円という経費が必要とされると言われている。これだけ、教員がタダ働きしているという事だ。
労基法では、労働者の健康と生活を守るために、残業の縮減を目標とされている。教員の残業手当を縮減するためには、一人当たりの授業時間を減らすこと、そのために教員定数を見直すこと、そして「乗ずる数」を改善することが重要だ。
さらに、中学校を中心に地域への部活動展開を推進することが急務であるのだ。教員から部活動を切り離せば、銀行と同じように3時で顧客業務が終了できるのだ。つまり、対生徒の業務から解放されて、教材研究、会議資料の作成、保護者対応などの1日の業務の整理と明日に向けた仕事の準備ができるのである。
これだけ倍率が低下してくると、教員の質の低下を懸念しなければならない。性暴力も含め、教員の様々な不祥事が今年1年間にも報道されたが、この不祥事と採用倍率の関係も、一概に無関係とは言えないだろう。国民は、もっとこの問題に注目すべきだろう。
給特法の改正などの取組は、前政権で行われたことだ。高市政権は「責任ある積極財政」を唱えている。高市首相から教育に関する政策を聞いたことはない。彼女にとっては優先順位が低いのかもしれない。しかし、「強く豊かな日本」を作るには、将来を担う子どもたちの健全な育成は欠かせない。そして、それを担う優秀な教員が必要なことは、言を待たない事実だ。
高市政権の誕生で、潮目が変わっているはずだ。もう一度「質の高い教員の確保」をどのように行うのか、仕切り直してはどうだろうか。

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