高校数学の再編


 12月22日の読売新聞に「文系もAI基礎理論」という見出しで、文科省が高校の数学で必修になっている「数学Ⅰ」に、AIやデータサイエンスなどデジタル社会に必要な基礎的理論を学ぶ単元の新設を検討していると報じた。

 現在の高校数学の科目は、数学Ⅰ・Ⅱ・ⅢとA・B・Cの6科目に分かれている。理系の生徒は、全てを学ぶが、文系の生徒はそうではない。進学校では、数学Ⅰ・Aと数学Ⅱ・Bまでである。大学受験等で必要がない生徒の数が増えていくにつれ、数学Bが消え、数学Ⅱが消えていくという事だ。

 ここで言われているデータサイエンスに関わる単元で言うと、確率・統計であろう。例えば、数研出版の教科書がどのようになっているかを見てみよう。

数学Ⅰ数学A数学Ⅱ数学B数学Ⅲ数学C
数と式場合の数と確率式と証明数列関数平面上のベクトル
集合と命題図形の性質複素数と方程式統計的な推測極限空間のベクトル
2次関数数学と人間の活動図形と方程式数学と社会生活微分法複素数平面
図形と計量 三角関数 微分法の応用式と曲線
データの分析 指数関数と対数関数 積分法数学的な表現の工夫
  微分法と積分法 積分法の応用 

上の表が各教科書の単元であるが、データサイエンスは、太字の単元で教えることになる。確かにバラバラだ。例えば、

数学Ⅰ(データ分析)+数学A(場合の数と確率)+数学B(統計的な推測)

を1つにまとめて教えるとすると、データサイエンスに関して言えば、高校段階で基礎的なことは学ぶことができる。大学に進学しても通用するだろう。しかし、数学Bの統計的な推測だけでも、確率分布が範囲に入りかなり内容は濃い。これを数学Ⅰに落とし込むとすると、かなりの分量になる。一体どういう内容になるのだろうと思う。記事にも、「単元が増えることで、数学Ⅰの指導内容が過多とならないよう、今後、対応策を検討する」と記載されているが、このことにより、他の単元の分野が薄まるとそれも良くない。

 現在の政権では、理系人材の育成が課題となっており、高校数学で数Ⅲまでの内容をしっかりと学ぶことも必要だ。一方で、この記事にも書かれているAIの内容も学ばなければならない。教科「情報」との関連で、AIの学習をどのように行うかがポイントだろう。東大の西成教授の以下の指摘も尤もだ。
「何がどう関係していくのか全体像が見えないまま、次々に課題をこなしているのが今の高校数学の現状だ。生徒が数学を学ぶ意義や意欲を持てるようにすることが大事だ」

この指摘のようになるためには、次期学習指導要領で課題となっている「中核的概念」について、より議論を深める必要があるだろう。数学でのメタ認知をどうするかという問題だ。面白い議論であるが、課題も多いし、大きい。


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