大阪府立高校は、今春の入試で半数の高校が定員割れとなった。今回の特別枠入試を、定員割れ問題の克服の一つの解決策とするために、どのような入試を行うのが良いかを考えてみた。専門高校と総合学科は除外して、普通科で考えてみたい。
まず、普通科を3つに大別してみた。偏差値55以上の上位校、45~54の中位校、44以下の下位校とわけてみた。その上で、今回の特別入試にどのような設定をしたのかをグラフ化してみた。
まずは、区分である。

そうすると、ものの見事に傾向がわかる。上位校ほど「学科等への適性」を設定し、下位校ほど「学校生活への意欲」を設定しているのだ。学校が抱えている現状からすると、こういう結果になるであろうことは容易に想像できる。しかし、少し考えてみればわかることだが、普通科下位校に、「学校生活への意欲」ある生徒が集まるだろうか。「意欲が無い生徒が多いから意欲がある生徒に来てほしい」という誠に単純な発想になっている。
それではどうすれば良いか。偏差値中下位校を希望する生徒は、遠くの学校を受験しないつまり地元に近い学校を受験する傾向がある。府立高校はますます再編・廃校されていき、衛星都市にある府立高校が少なくなっている。そう考えるとき、中下位校が取るべき道は、「地域貢献」だろう。どれだけ地元に貢献できる人材を育て上げるかだ。このメッセージを出す中で、地域の信頼、地元中学校の信頼も得ることができる。
しかしながら、今回の特色枠で地域貢献を設定した学校は、中下位校で1枠である。学校の経営戦略として、「地域貢献」する教育が行われていないからだろう。高校が立地する地域、市町で何が求められているのか、「総合的な探究の時間」の内容を絡めた探究学習と合わせた地域貢献の教育を行ってはどうか。それが、定員割れを克服する一助となるのではないかと考える。
上位校はどうだろう。あの戦前からの伝統校である寝屋川高校が定員割れを起こし、「寝屋川ショック」と言われた入試結果である。上位校と雖も、そしてボリュームゾーンと雖も安泰とは言えない。
上位校になるほど大学進学希望者は増える。文理学科の10校は、国公立大、超有名私立大をめざし、大学入試では一般入試を中心に受ける層だ。2番手校以降になると、だんだんと一般入試から総合型選抜、そして安易に進学先を決める学校推薦型へと移行してくる。
文理学科には及ばない普通科上位校は、一般入試で勝負する学力という判断基準以外で勝負できる生徒を育てるべきだというのが私の考えだ。私立大学はもちろんだが、国公立大学でも推薦入試の枠は拡大されている。このような入試を突破する生徒を育てるというのが、2番手校以降の高校の役割ではないか。
そう考えると、どれだけ尖った教育を行えているかというのがポイントになる。残念ながら尖った教育を行えているという点では、府立高校の数は圧倒的に少ない。今回「探究活動」を区分に上げた富田林高校ぐらいではないか。春日丘高校や狭山高校は、文理探究学科に改編される。このような動きをモデルとして、探究活動に力点を置いた教育を行うべきなのだ。
このように考えれば、今回の特別枠入試についても、自然と「尖った生徒」を獲得することが、経営戦略として浮上してくるだろう。しかし、現状「探究活動」を区分に上げている学校は極めて少数である。
そして、選抜基準についても、尖った要素が見えないというのが現状だ。選抜資料についてグラフ化すると、以下のようになる。

普通科の選抜資料には、プレゼンテーションなどは一切ない。これでは、「尖った生徒」を選抜することはできないだろう。
施設設備が整っている私立高校に対抗するために公立高校に必要なことは、どれだけ教育内容に魅力を感じてもらえるかという事だ。言い換えれば、私立高校以上に尖った教育を行う必要があるという事である。
ところが、残念ながら今回の特別枠入試については、尖った教育を行おうという意思を見せた府立高校は、極端に少ない。これでは、府立高校の再生は難しいと言わざるを得ない。

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