12月3日の読売新聞の25面に、「『教委パワハラ』校長提訴 『保護者対応を強要』」という記事が掲載された。「えっ!」という記事である。堺市教育委員会が、堺市立中学校の校長に保護者の意に沿う対応をとるように強要し、校長がうつ病を発症したというのだ。校長は、市に330万円の損害賠償を求め、提訴したというものである。
読売新聞には、何があったかが書かれていた。記事によると、
「2024年7月、校外に無断で昼食を買いに出た生徒3人に対して担任教員が指導や注意を行ったところ、うち一人の保護者から、教員を懲戒処分にし、担任や部活の顧問から外すように求められた」
というのだ。朝日新聞によると、保護者の言い分は、
「一般の人がいるところで指導をするのはいかがなものか」というものらしい。
校長が、スクールロイヤーである弁護士に相談したところ、「不適切な指導ではなく、保護者の要求に応ずる必要はない」と回答したという。
ここまで記事を読んでいると、担任の指導や校長の監督責任に瑕疵はないように思える。きちんと専門家である弁護士の見解も得ているのだ。保護者の一人が、教育委員会に謝罪を要求しても、教育委員会は校長や担任を擁護する必要がある。しかし、堺市教委は、生徒側への謝罪などを繰り返し求め、25年の4月に別の中学校に校長が転勤してからも謝罪するように市教委から指示があったという。
市教委の渡辺学校教育部長は記者会見で、「市教委としては適切に対応してきたと考えている」とコメントしているが、何をもって適切と言えるのだろうか。この点については、記事には記載されていない。
少なくとも、弁護士にまで助言を求めて、「適切である」と判断された指導や対応について、謝罪しろという市教委の姿勢は、保護者に阿っているとしか思えないし、この保護者が求める教員の懲戒処分や、担任や部活動顧問から外せというのは、校長の人事権にまで及ぶものであるため、今話題になっているモンスターペアレントと言われても仕方がない状況だ。
市教委は、「適切である」というのならば、何が適切であるのかを明確にすべきである。今知る限りの情報によれば、この担任や校長の指導に瑕疵は見受けられないと思われ、こんな市教委の下では、学校現場はやってられない。東京都は保護者対応をカスハラという概念から整理している。そのような動きを堺市教委は行っているのだろうか。少なくとも堺市は、政令指定都市なのだから、保護者のカスハラ対策に関して、きちんと指針を出すべきである。どうも、この動きは、カスハラ対策とは逆のようだ。

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