大学を休みがちな息子


 12月1日の読売新聞、人生案内に「大学を休みがちな息子」という題で、50代の母親から相談が寄せられていた。この春に大学に入学した末っ子が、休みがちであるというのだ。
入学後は欠席が多く、前期の単位で取れたのは半分ほど。後期も休みがちだという。

 この末っ子は、中学校の時は途中から別室登校、高校も休みがちで通信制高校に転校したという。大学にも推薦入試で合格したというのだ。大学を休んだ日は、スマートフォンでゲームばかりしているらしい。相談を寄せた母親は、大学の相談室に相談に行ったようだが、本人は動かない。母親の頭には、「中退」という言葉が頭によぎるようである。

 この相談に回答を寄せた大学教授の山田氏は、「新型コロナ禍の終息後、大学に馴染めずに休みがちな学生は増えています」とし、「中退を考えるのは早すぎ」とアドバイスし、大学の相談室やNPOと繋がることを勧めている。確かに、中退を考えるのは、早すぎるだろうし、相談機関と繋がることは、解決の早道と言えるだろう。しかし、私はこの問題は中々解決しないように思うのだ。というのも、私は通信制高校に勤めており、同じようなケースになるのではないかと思う生徒が、大学に進学していくことを目の当たりにしているからだ。

 この末っ子も大学に推薦で入学したという。それが、どのような推薦かはわからないが、おそらく学校推薦、いわゆる指定校推薦と言われるようなものであろう。指定校推薦は、ほぼ無試験で、面接のみというケースが圧倒的に多い。高校時代の成績(評定平均値を用いる)が推薦の条件をクリアし、競合する生徒よりも有利であれば、学校からの推薦が得られる。

 今秋、私はこんな生徒の指導をした。というより、指導できなかったといって良い。その生徒もある大学の指定校推薦に応募した。面接があるので、練習をしようと声をかけ、1回目の練習をした。しかし、一番肝心な志望動機が全くあやふやで、いくら指定校推薦といっても、危うくなるレベルであった。色々と生徒と話をする中で、大学に進学したい理由や、何を学びたいのか、そして学んだことをどのように役立てたいのかなどを引き出し、生徒自身の「物語」を作成した。「今日話をしたことをまとめて、次回面接練習をしましょう。準備ができたら連絡をして。」と言ってその日は終わった。数日たつと、ノートをちぎったようなペーパーにメモ書きで、志望動機が書かれたものが私の机に置かれていた。私がいない間に、この生徒が職員室に来て、「渡してほしい」と言って帰ったようだ。志望動機の内容は10点中3点ほどの内容で、まだまだこれから指導が必要なレベルだった。

 私はすぐに生徒本人に電話を入れたが、出ず。その後も何回も連絡を入れたが、折り返しの電話も無い状況が続いた。一切、コンタクトを取ろうとしないのだ。最初の面接指導でも、明らかにコミュニケーションが苦手というタイプの生徒である。何回電話しても出ないまま、とうとう受験日が来てしまった。大学からは、合格の通知が学校に来たが、本人からは一切報告が無い。こういうタイプの生徒が、大学に行って果たして続くのだろうか。

この相談対象の末っ子のようになるのではないかと、一抹の不安が想起してきた。


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