高校改革モデルの二つの高校


 11月30日の読売新聞に二つの高校が紹介されていた。岡山県高梁市の県立高梁城南高校と大阪府立鳳高校だ。24面の地域力の紙面に掲載された高梁城南高校は、高校生の会社設立の話題、25面の地方版に掲載された鳳高校は、政策甲子園で最優秀賞を受賞した話題である。

 高梁城南高校の生徒たちは、授業で学んだ「ものづくり」の知見を活かして、住民の困り事を解決する株式会社を設立したという。デザイン科に属する生徒が、市の中心部にある日本料理店で商談に臨んでいる記事が紹介されていた。販売する鮎の甘露煮などのパッケージや店頭PR用のポップの制作を頼める企業が地元には無いという悩みを抱えていたところ、この城南高校に知恵を借りることになったという。

 鳳高校は、「全国高校生政策甲子園」の自由テーマ部門で、最優秀賞を受賞した。彼らが挑んだテーマは、デマ情報に惑わされないために、国や自治体などの災害情報を一元化する「政府公式防災アプリ」を導入するという提案だ。今後は、高市首相の前でもプレゼンテーションを行う予定だという。

 二つの高校に共通しているのは、探究活動をベースに研究が行われていることであるが、SSHなどの発表を見学していると、自分の興味関心のあるテーマに取り組んでいることがままある。発表を聞いていても、「それは社会にどれほど貢献するのか」という疑問を持つのだ。ノーベル賞を受賞するような研究では、基礎研究ということが必要だろうが、どうもそのような研究でもないピントがずれていることがある。そのような研究に比して、この二つの高校の取組は、社会に目が向いているということである。探究活動は、こうでなくてはならない。社会課題を如何に解決するのか、そのために何が必要なのか、これが求められるのである。

 現在、政府や自治体で公立高校の魅力化に向けた取組が行われている。東京都は、デジタルに強い生徒や国際バカロレアの大学受験に挑戦する生徒を育成しようとしている。世界を相手にできる高校生を育てようとしているのだろう。大阪府は、海外との国際交流をすべての府立高校で実施しようとしているが、どうせ税金を投入するなら、この二つの学校のように社会課題を解決する探究活動に投入してほしい。そうすれば、企業との連携、大学との連携、地域との連携が飛躍的に進む。

 今回最優秀賞を受賞した鳳高校は、近年定員割れを起こしている。戦前からの伝統校にも関わらず定員割れとなったのだ。多くの府立高校が定員割れという状況に陥っている中で、府立高校の魅力化のモデルになってほしい。そして、探究活動をけん引する存在になってほしいと思う。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP