ウクライナは負けるのか?!


 トランプ大統領が、ゼレンスキー大統領にロシアとの「和平案」を提示した。これは和平案ではない。ウクライナがロシアに屈服しろという提案だ。余りにもロシアの要求を汲んだ内容と言える。領土割譲を迫るアメリカ、トランプ大統領に怒りを覚える。この和平案をゼレンスキー大統領が受け入れたら、ウクライナは一体何のために闘ってきたのかということになる。軍事力の半減、NATO非加盟の憲法明記などは、もうウクライナがウクライナという国ではなく、ロシアの属国になることを宣言するようなものだ。

 今、世界は核の脅しにさらされている。アメリカや欧州の各国がウクライナ支援に積極的になることができないのも、ロシアの核の脅しがあるからだ。ロシアは、自らの存立が危機にさらされれば、核を使用するという核ドクトリンを堅持している。ウクライナの核放棄、すべての不幸はそこから始まっているのかもしれない。

 もし、ウクライナがこの戦争に負けたなら、その影響は全世界に及ぶ。力による現状変更がロシア・アメリカという大国によって認められたことになるのだ。力ある国が、武力で、そして武力の脅しで、現状を変更しようとすることができる世界情勢になるということだ。中国は、この戦争の行方を注視しているだろう。高市首相の台湾有事に関する存立危機事態の答弁に、これほど反発するのは、ある意味中国もこの問題に神経をとがらせている証左だろう。

 現在、このアメリカ「和平案」=ウクライナ屈服案に対して、ゼレンスキー大統領は、英仏独のリーダーと協議している。ウクライナの敗北は、欧州各国にとっては、対岸の火事ではなく、すぐ隣の火事なのだから。

 なぜ、アメリカは、このような「和平案」を提示したのだろうか。アメリカはウクライナを支援することに疲れたのだろうか。というより、エマニュエル・トッド氏が言及するように支援する能力を持たなくなったのだろうか。そうであるならば、まさに氏のいう「西洋の敗北」が訪れようとしている。氏が言うには、明らかにアメリカよりロシアの方が自国でエンジニアを育てているというのだ。戦争継続能力をロシアが有するのも、そのためだという。

 アメリカは、ウクライナを守らないということが明らかになれば、日米安保条約という軍事同盟に頼るのも、危なっかしい。アメリカの若者が、日本を守るためにその尊い命をかけるのか。まさに、日本の安全保障について突き付けられた課題だ。日本国民もうすうす感じているはずだ。アメリカは日本を守らないと。そうすれば、自国は自国で守ること、そして対中国・対北朝鮮・対ロシアで志を一つにする東アジア、東南アジアで同盟を結ぶ必要がある。NATOのような集団安全保障である。自国を守るためには、核の共有も必要だろう。非核三原則の「持ち込ませず」も見直す検討が必要だ。原子力潜水艦の建造も検討を要する時期だ。

ウクライナが負けたら、世界情勢は根本から変わるだろう。日本人も「平和のぬるま湯」から上がり、厳しい世界情勢を我がことと考えて歩まなければならない。


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